時空管理局本局内ショッピングモール 某日 時刻14:22 「ここに来たのも久しぶりだな〜」 「……そうなの?」 そんな事を呟いたのは時空管理局の嘱託魔導師、・。 そして、彼の横を歩く少女、フェイト・テスタロッサ。 「うん、でも買い物っていったってこういうのはよくわかんないんだよね……」 「私も……そういうのはあんまり……」 普段、服装等をはあまり気にせず、放っておけば永遠に同じ服ばかり着ているのではないかとさえ思えるほどで、 服装、いわゆるファッションや流行といったものには疎いのであった。 フェイトもまた、特殊な環境下でそんな事を気にしている余裕など無かった為か、年頃の少女らしいところが少し抜けているのだった。 今二人が歩いているのは、一つの都市といっても過言ではない時空管理局内にある衣服店やら飲食店やらが立ち並ぶ、 なのは達の世界、地球の日本における巨大なデパートといった感じの場所で、局員達の憩いの場となっているところである。 デパートといっても店ばかりではなく大きな公園もあり、デートスポットとしても活用されている。 (なんか気まずいなぁ……こんな時はどうすればいいんだろ……) どうも会話が進まないので、は困ってしまった。 フェイトはほとんど俯いてしまっており、話そうとする気配もなかった。 といっても、元々よく喋る子ではないのだが。 まず、なぜ二人がここにきているのか説明しておこうか。 先日 「はあ〜……なんで検査なんかしないといけなんだい……?」 アルフがめんどそうにぼやく。 「仕方ないよ、僕らも最初は色々したしね」 《あれは長かったな》 とが思い出しながら答える。 「うぇ〜……そんなに長いの?」 それを聞いてさらにげんなりするアルフ。 「まぁ管理局もそれなりに権限のある組織だからね、使い魔についても慎重にならざるを得ないんだ」 「ごめんなさいね、アルフさん」 「いや、あたしはいいんだけどさ……フェイトが心配だよ」 「私は大丈夫だよ。アースラにいればいいんだし」 「そうかなぁ……、あ、もう時間だ。じゃああたしは行ってくるね」 「うん、いってらっしゃい」 フェイトがアルフを送り出し、クロノが執務官としてそれについて行く。 「さて……と、それじゃ君とフェイトちゃん、ちょっとこっちに来て」 「「 ? 」」 さっきまで黙っていたエイミィが呼びかけ、それを聞いて顔を見合わせた二人は、エイミィについていく。 二人は艦長室に入ったエイミィとリンディについて中に入る。 「まあまあ二人とも、まずは座って」 「あ、はい……」 「えっと、どうしたんですか?」 リンディの薦めに従って座り、が尋ねる。 「フェイトちゃんは局に来てからもずっとアースラにいるだけだし、たまには外に出て気分転換しないと」 エイミィが嬉しそうにしながら言う。 「そこには色々お店もあるし、とっても楽しいと思うわ」 「そうなんですか……」 「それで、私達は皆手が離せないの。だから、君?」 「へ?」 「あなたがフェイトさんと行ってあげてね」 「えっ!?」 「僕が……ってフェイト? どうしたの?」 「あ、いや……その……」 フェイトがしどろもどろになって答える。 それをは頭に無数の?マークを浮かべて見ている。 『リ、リンディさん……』 『どうしたの? フェイトさん』 『あ……あの……二人っきりって事は……その……』 『そうそう、デートだよ〜♪』 『でっ、ででで……デー……ト……』 リンディとエイミィがにやにやしながら耳まで真っ赤にしているフェイトを見ているのを見て、はさらに頭に?マークを浮かべる。 「それじゃ、そういう事だから君、ちゃんとフェイトちゃんをエスコートしてあげてね」 「はぁ……」 「それじゃ、明日頑張ってね、フェイトさん」 「頑張る?」 「な、ななな、なんでもないよ!」 「そ、そう?」 《はほんとにお子様ねぇ〜》 《……》 で、現在に至る。 先程から二人は何をする事もなくただ黙々と歩いている。 「あ、あそこのケーキがおいしいんだよ。入ろうか?」 「う、うん……」 二人が店内の一角にある席に座り、店員が水とおしぼりを出して去っていく。 「ここのチーズケーキがほんとにおいしいんだよ、あ、あとイチゴのショートもおいしいなぁ。フェイトはどれがいい?」 先程からメニューをじーっと見つめ続けているフェイト。 かなり悩んでいるようだが、やはり甘いものが好きなのは女の子らしいと言えるだろう。 「えっと……私はイチゴのタルトがいいな……」 「わかった、すいませーん」 が店員に次から次へと注文していく。 それを茫然と見つめるフェイト。 数分後、小さめのテーブルには大量のケーキが所狭しと並び、がそれを物凄い勢いで食べていた。 「はぁ〜、おいしかったー!」 「……お腹痛くないの?」 「全然大丈夫だよ、もうちょっと食べれたかなぁ」 「そ、そうなんだ……」 あれ以上まだ食べるのかな……と、フェイトはのとんでもない一面を見た気がした。 それから色々な店に回ってみたはいいが、特に買う物もなく時間が経ち、二人はぬいぐるみが沢山ある店に立ち寄った。 「なんかいっぱいあるね〜」 「……」 「フェイト?」 フェイトは一つのぬいぐるみをじーっと見つめていた。 そのぬいぐるみは赤とオレンジ色をした子犬と灰色がかった不思議な色の子猫……商品説明には山猫と書いてあったそれらが、 寄り添うようにしてちょこんと座っているものだった。 「……すいません、これが欲しいんですけど」 「えっ?」 が突然店員に声をかけ、フェイトの見つめていたぬいぐるみを指差している。 「あの…………」 「いいからいいから」 そう言ってウィンクをし、はお金を払ってそれを買う。 「はい」 店を出て、買ったぬいぐるみをフェイトに差し出す。 「えっと……あの……」 「これ、欲しくなかったかな?」 が苦笑いをして言う。 「そ、そんな事ないよ!」 「そう? じゃあどうぞ」 「あ……」 勢いで受け取ってしまったフェイトが赤くなる。 それを見てクスクス笑いながら、は近くにある公園へ歩いて行った。 「すいませーん、ソフトクリーム二つくださーい」 公園のベンチに座ったフェイトは、近くでがソフトクリームを買い求めるの声を聞く。 まさに動く要塞といった感じの局内で、これ程自然溢れる空間があるというのは少し意外で変な感じでもあったが、 小鳥のさえずりと目の前にある池の綺麗な水を見ていると、そんな事はどうでもよくなった。 (……こんな時間を過ごすなんて……思いもしなかったな……) つい最近まで、本当に最近まで、母の操り人形として戦い続けていた自分が、今は普通の少女のようにしている。 それが自分には縁のないものだと考えもしなかったのに、自分を助けてくれた少年といると胸がドキドキするのはなぜだろう。 答えのでることのない疑問に悩んでいると、が両手にソフトクリームを持って戻ってきた。 「はい、ここのソフトクリームもおいしいんだよ」 「ありがとう……」 からソフトクリームを受け取り、一口食べてみる。 甘くてひんやりとした舌触りの良い感触が味覚を刺激し、胸の高鳴りを少し抑えてくれた。 「……おいしい」 「そう? 良かった」 無意識に出た言葉に、は笑って答える。 「……は……記憶が無いんだよね?」 少しの間沈黙が続き、フェイトがに尋ねる。 「ああ、三年前に見つかってから、それ以前の記憶はね」 「その……記憶が無いって、どんな感じなのかな……」 「……」 「あ、ご、ごめんなさい……」 黙りこんでしまったを見て、フェイトは聞いてはいけない事を聞いたのだと思って謝る。 「いや、いいんだ。そんなに考えた事無かったから……」 「そうなの?」 「うん。色々考えても、どうにもならないし……。でもまあ、そう言ってる間に三年も経っちゃったけどね」 そう言って苦笑いをしながら、ソフトクリームを食べる。 「……そう、なんだ」 「でも、どうしてそんな事を?」 「私の記憶はアリシアの記憶で……私のじゃないから……」 「……」 フェイトの言葉を聞き、はソフトクリームを頬張るのをやめ、じっと前を見据える。 フェイトにとって、またも気まずい沈黙が流れていき、心がどんどん重くなっていく。と、 「記憶なんて、なくたって生きていけるよ」 「え?」 が唐突に口を開き、その言葉にフェイトは思わずフィールを見つめた。 「自分の事を心配してくれる誰かがいれば、生きていける。 記憶なら、これから沢山作っていけばいいんだ。嬉しい事も、悲しい事も……」 「……そう……だね」 「だからさ、そんなに深く悩む事もないって。毎日頑張って生きていけば、きっと楽しい事も沢山あるからさ」 そう言って、はけらけら笑いながら残りのソフトクリームを口に放り込んだ。 「ん、じゃあそろそろ帰ろっか」 「うん!」 ようやく微笑むフェイト。 もう、心にのしかかっていた煩わしい重みは、すっかり無くなっていた。 それから、彼女のベットの枕元にはいつも、子犬と子猫のぬいぐるみが傍らに置かれるようになった。 あとがきらしきもの 優「うああああああああなんじゃこりゃああああああああああ」 「うるさいよ?」 優「ぐっ……てかSSって難しい……」 フェ「初めてだったしね」 優「黒影さん、こんなのでほんとごめんなさい_○__ こんなのでよければどうぞお持ち帰りを(*´・ω・`)」 「ちなみに黒影さん以外の人はお持ち帰りはダメですよ〜」 SS置き場へ戻る |