第一話 始まりの朝

それは小さな魔法使いが誕生する少し前の事……


「へぇ、ここが海鳴かぁ……」


一人の少年は高台から町を見下ろす。
まるで宝物を目の前にしたかのような輝く目で。


「俺の家は確か……おっ、あそこか!」


少年はこれから始まる生活の場である自分の家を見つける。
なにしろ流浪の身で同じようなことはしていたが、ひとつの場所にとどまり一人だけで暮らすなどはじめての経験、興奮しないはずがない。


「おお、中々いい感じじゃないか。周りも賑やかそうだし」


ただ普通の子供とは違いこの少年はこの年で一人暮らしをしようという。
本来ならありえないことだがこの少年はすこしばかり事情が違う。
元となる資金はかなりの額を有し、流浪の生活をしていたせいか家事もそつなくこなせる……と一人で生活するには事欠かない状況なのだ。


「さ〜て、今日から気合入れて頑張りますか!」


そしてもう一つ、普通ではない事、それは……、


『気合いを入れるのは結構だが、初日から空回りはするなよマスター』
「わかってるって。毎度毎度そんなに失敗しないって」


意志を持つ不思議な宝石を身につけていることだった。


『そのセリフは前に何回も聞いた。そんなことを言っている時に限って君は失敗するんだ』
「うるさいぞハルピュイア、今度は大丈夫だって」
『その切り返しも何回も聞いた。それを言った時の失敗率は……』
「あ〜もう、大丈夫だって言っt、うわぁ!」


転んだ。


『……失敗率は100%だ』
「イタタ……おっかしいなぁ、こんなはずじゃあ……」


まるで兄弟のような会話だった。
張り切る弟といさめる兄……そんな関係がピッタリだった。


「まあいっか。とにかく家に行こう、まずはそれからだ」
『反省の色は皆無か……まあいつものことか』


これは始まりの物語。
すべての物語は繋がり……、


「さあ行くか、アイボウ!」
『ふん……』


そしてここから始まる。




             ◆




ここは鳴海市郊内のとある家。

「ふあぁぁぁ……朝か……」

そして今日からフォルカの生活の場となる場所だ。

「おはよう、ハルピュイア。今日もいい朝だね……ってアレ?」

日差しが明るく照らし、なんとも静かで穏やかな朝。
しかしそんな完璧に気持ちの良い朝を迎えられるはずもない。

『おはようじゃない……何故私の上にダンボールが乗っかっているのだ!』
「……あっ、そっか。荷物の整理をしていたらいつのまにか夜になって、あまりにも眠かったからそのまま寝ちゃったんだっけ」
『回答になっていない! いいからこれをどけろ!』

どうやら寝ぼけて引き出しか何かと勘違いをしたようだ。
部屋は未だに乱雑に荷物が置かれ、とても人が生活をしているような空間ではなかった。

「まあリビング周辺はなんとかなったし、べつにいいじゃないか」
『それはまだいい。だが、どう考えても書斎より先に自分の寝床ぐらいは確保したほうがいいだろう』

この家にたどりついてはじめにフォルカがしたこと、それが書斎の整理だった。
フォルカは大量の本を所持しており、それを全て収納するためにこの家でもっとも広い部屋を書斎にあてていた。

「んー、でもせっかく貰ったりした本とかを箱の中にずっと入れているなんて失礼とか思わない?」
『さっきまで相棒を箱の下敷きにしていた男の言うセリフとは思えんな』
「……ごめんなさい」

そこをつかれたら謝るしかない。

『しかしまあ、よくここまで集めたもんだ……』
「ああ、貰ったやつとかを次元空間にしまっといたらこんなになってたからなぁ」

ここにある本の数はざっと小さな図書館ほどはある。
ジャンルは絵本から哲学書まで幅広い。

『だいたいの本はあそこの部族から貰ったものか?』
「うん、仲良くなったヤツがいてね、色々と貰ったんだ」
『よくもまあ……』
「まあまあ……さてと、今日も頑張りますか!」


             ◆


その日の夜……、

「やっぱり自分で作った飯はうまいなぁ〜」
『自分で言うか、普通?』

フォルカは晩御飯を食していた。
当然自分で作ったものである。

「御馳走さま〜」
『……相変わらず早いな』

晩御飯を食べ始めてまだ10分とたっていない。

『ちゃんと噛んで食べてるんだろうな……』
「当然!ちゃんと味も噛みしめてるし」
『疑わしいものだ……いいか、そもそもお前は……』
「(やばっ、このパターンは……)」

フォルカは長い間ハルピュイアと過ごしていて自覚していた。
このパターンは説教モード、しかもかなりの長時間仕様の予兆である。

『大体貴様は日ごろからだらしなさすぎるのだ! 俺はお前の両親からお前を任せられた者としてだな……』
「(うう……こうなると長いんだよな……)」

この状態になった時は短くても小一時間、長い時は3時間ほど付き合わされた時もある

「(どうにか逃げないと……)」
『つまりお前はだな……』


その刹那、


「!?」
『これは!?』


ありえない違和感を感じた。

「……なんだこの感じ……」
『……ここから少しした所で巨大な魔力反応を探知した』

魔道技術がないはずの世界での魔力反応。
小さなものでも異常だというのに、尋常ではないほどの巨大なモノ。
緊急事態以外のなにものでもなかった。

『管理局絡みか……? いや、かなり魔力の質が荒れている。訓練した魔道師の魔力がここまで荒れているはずがない』
「……それ以前に反応が一つというのも変だ。捜査官と対象物、少なくとも二つ以上はないとおかしい」
『……どうするフォルカ?』

フォルカはためらった。
確かに確かめるための力が自分にはある。
だがためらう理由もあった。

『もし管理局がなにかしてるなら手伝う必要もないし、その義理もない』
「だけどなにか管理局が感知していない異常……たとえばロストロギア関連だったりしたら……」

下手をすればこの街そのものに脅威が及びかねない。

「……とにかく様子を見に行こう」
『……いいんだな?』






「これ以上誰かを傷つけるわけにはいかない……」

二人は外に飛び出した。



             ◆


その頃、その震源地では一人の少女が一匹の小動物をつれ異形の怪物から逃げ続けていた。

「僕の持っている力をアナタに使って欲しいんです」

そしてここから……、

「僕の力を……魔法の力を!」
「魔法……?」

一つの物語が始まる。



第二話 「風再び・・・」 につづく。





               ◆
あとがき(のようなもの)


レ「というわけではじめてみましたSS投稿〜」
フォ「おおー(パチパチ」
ハ「……」
レ「おや? どうしましたかハルピュイアさん?」
ハ「なんだこの駄文は? いや、文と言うのもおこがましい」
レ「へ? い……いやぁ、まあ初回ってことで許して……」
ハ「だいたいお前は……」
レ&フォ「(このパターンは……マズイっ!)」
ハ「いいか、そもそも……」
レ「と、とにかくっ! これから不定期更新になりますが!」
フォ「舞行く風の舞踏をよろしくお願いしまッス!」
ハ「貴様ら聞いているのか!」
レ&フォ「はいぃっ!!」




投稿ありがとうございますレオンさん!
いや〜、良いですね。フォルカもハルピュイアも良い性格してて即効で好きになっちゃいましたw
今回は初回ということで管理人も書き込みましたが、以降はありません。
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管理人が責任を持ってレオンさんへお届けいたしますので。それでは、これからもお互いに頑張っていきましょう、レオンさん!


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