不屈の心と優しき閃光


「……」

 レイジングハートの"ユーノに届いたかもしれない言葉"を聞いて、なのはは目を瞑り、両手を自身の胸に添える。
 少しの間沈黙し、ゆっくりと目を開けたなのはは、かけがえのない相棒を見遣る。

「……本当にありがとう、レイジングハート」
《お気になさらず、マスターなのは》

 相変わらずの口調に戻ったレイジングハートに、なのはは笑みを零す。


 シャマルとシャーリーから緊急事態の知らせがレイジングハートに届き、なのはにそれを伝える。

「私も、しっかりしないとね」
《そうですね》

 迷いを断ってレイジングハートに微笑むなのはが、一層輝いて見えた。

(……あの事も、伝えるべきなのでしょうか)

 レイジングハートが自身のAIと情報処理機能をフル稼働させて、答えを導き出そうとする。
 しかし、それは術式を組む時や魔法を発動する為のものであって、求める答えは得られなかった。

(理屈では無いのでしょうね)

 考えてから、自分にとっては随分飛躍し過ぎた考えだとレイジングハートは思う。
 インテリジェントデバイスにしてみても、これ程人の心に近いものを持つようになるとは。

(……どちらのマスターにも世話を焼かされますが……。
 感謝してもしきれないものを、私に与えて下さっているのですね)

 だからこそ、二人には幸せになって欲しい。
 いや、幸せになってもらわなければ困る。
 ここまで周囲に心配をかけさせたのだ。
 なのに、互いに想いを伝える事すらなくこのままだなんて、いくらマスターでも許せるものか。

(今度、マスターなのはがマスターユーノと二人きりになる機会を得た時にでも、話すとしましょう)

 それは、現主であるなのはに偽ってまでユーノに会いに行った時。
 偶然はち合わせたクロノ・ハラオウンから聞いた、ユーノ・スクライアの本心。 

(……マスター、どうか道を誤ることの無いように)

 レイジングハートにとって二人は、本当に大切なマスターだから。
 そして、妹と弟のようで、娘と息子のようでもあるから。

(『不屈の心』は、いつ何時も御二人を……マスターを見守っています)

 そう呟いて、レイジングハートは僅かに光を発した。
 その光に、かけがえのない二人のマスターへの、海より深き慈愛を込めて。


『フェイトちゃん、主催者さんは何だって?』
『外の状況は伝えたんだけど、お客の避難や、オークションの中止は困るから、開始を少し伸ばして様子を見るって』
『そう』
(……なのは?)

 フェイトは、念話越しに聞いたなのはの声を聞いて首を傾げる。
 以前からほんの僅かだけど感じていた、なのはのどこか吹っ切れていない感じ。
 それが、今の念話からは全く感じ取れなかったから。

(何かあったのかな)

 その何かが、フェイトにはわからなかったけれど。
 恐らくなのはにとっては、とてもプラスとなった事なのだろう。

《サー?》
「……どうしたの? バルディッシュ」

 フェイトはかなり驚いた。
 普段は徹底して無口で、十数年の付き合いの中でも、
 『漆黒の戦斧』がフェイトに話し掛けてきた事等、指で数えるのも大変な程だ。

《……いえ、とても嬉しそうにされていたので》
「そう? ……そうかもしれないね」

 そう答えると、フェイトはくすくす笑う。
 任務中に不謹慎だとは思ったが、なのはの事とバルディッシュが話し掛けてくれた事。
 それらが本当に嬉しかったのだから、仕方ないかなとも思う。
 ここにあの真面目な義兄がいれば、真顔で注意してくるのだろうけど。

「ねぇ。バルディッシュはなのはとユーノの事、どう思う?」
《……》

 反応がない、予想はしていたけれど。
 今のような話題の内容で話すイメージは、正直バルディッシュには皆無だ。

《高町なのはとユーノ・スクライアは、サーにとって大切な御友人です。
 ならば私にとっても、大切な友人という事になります。友の幸せを願うのは、自然な事だと思いますが》

 だからフェイトは目を点にして、待機状態のバルディッシュを見つめていた。
 まさか乗ってくるとは、とかなり驚いたが、やっぱり普段極力無口な相棒の言葉を聞くのはなんだか嬉しかった。

《……サー、何か言って下さい》
「え? あ、ごめんね、バルディッシュ。凄く意外だったから……」
《……心外です》

 今日のバルディッシュはとても感情豊かだ。
 嬉しくてまたくすくす笑うフェイトは、相棒に微笑みかけながら口を開く。

「ごめんね、でも嬉しいよ。バルディッシュがそこまでなのはとユーノの事考えてくれてるなんて」
《……いえ、どうかお気になさらないで下さい》
「恥ずかしいの?」
《……新しい情報が入って来ました》

 あ、逃げた。
 せっかく面白くなってきたのに。
 でも流石にこれ以上は可哀想に思えたし、新しい情報が入ったのも確かだ。
 これからは少し生真面目過ぎる相棒をからかってやろう、と実に茶目っ気たっぷりな考えを巡らすフェイトだった。




 ガジェットの撃退が完了した知らせを受けたなのはとフェイト。
 ようやく始まるオークションにざわめく客達に気を配りながらも、フェイトは詳細な情報をなのはに伝えていた。

「ミッドチルダ考古学士会の学士であり、かの無限書庫の司書長、ユーノ・スクライア先生です」
「「 ! 」」

 そんな折に、悩みの種である人物の名前を聞いて、なのは共々ステージに顔を向ける。

「あ〜……どうも、こんにちは……」

 そこには、随分と引き攣った笑みを浮かべたユーノがマイクを握っていた。

「あっ!」
「ユーノ君!」
(やっぱり良い事があったんだね、なのは)

 以前のなのはなら、ユーノを見てこんなにも嬉しそうな表情はしていなかった。
 どこか遠慮がちで、たどたどしい笑みを浮かべるだけだったから。

「フェイトちゃん」
「え?」

 不意に声をかけられて、フェイトは驚く。
 が、なのはの真剣な表情を見て、フェイトも表情を引き締めた。

「私、もう迷わないから」
「……なのは」
「大丈夫だよ、心配掛けてごめんね」
「そんな事ないよ……、頑張ってね」
「うん!」

 なのはがこんなにも輝いて見えるのは、いつ以来だろうか。
 このホテルに来てから、然程時間は経っていない。
 とすれば、なのはとずっと一緒にいた者のおかげ。

『レイジングハートのおかげなのかな』
『……どうでしょうね』

 念話で話しかけると、レイジングハートが輝きを放った。
 それをフェイトは安堵の表情で見、ユーノに視線を戻す。

(あとは……あの駄々っ子をどうするかだね)

 なのはが吹っ切れたのは、本当に大きな前進だ。
 残るは今、かなりの仏頂面で品物鑑定をしているユーノだけ。

(会って話すしかないよね)

 なのはには悪いが、先にユーノと会って話をしてみよう。
 そう考えて、どうやってなのはより先に会おうか、と思案するフェイトだった。


(流石にこれは予想外でした……)

 レイジングハートがあまりに突然の事態に困惑する。
 まさかマスターユーノが、今この場にいるとは思いも寄らなかった。

(マスターなのはは本当に嬉しそうにされていますし……)

 ほぼ間違いなく、なのはとユーノは二人きりになるだろう。
 レイジングハートがその確率を自身に組み込まれている機器で計算してみる。
 案の定、様々な状況下で想定してみるが、その確率は100%に限りなく近かった。

(……いずれお話しするつもりだったのですから……仕方がありません)

 マスターなのはが決心したのだ。
 ならばその相棒たる自分も、覚悟を決めなければならない。
 この話が、決意を固めたばかりのマスターなのはにどれ程の影響を与えてしまうのか。
 レイジングハートに予想する事は出来なかった、……理論的には。
 しかし、理論だとか理屈だとか、そんな堅苦しいものは抜きにして、長い時を共に闘ったマスターなのはなら大丈夫な気がした。
 いわゆる"勘"というやつだ。機械である自分にそんなものがあるかどうかなど、この際関係ない。
 ただ単に、今のマスターなのはなら真っ直ぐに受け止めてくれるだろうという、直感からくるもの。
 根拠も理由もないが、なぜかレイジングハートには確信に似た何かを、確かに感じ取っていた。

    :
    :
    :

「ユーノ!」
「……フェイト?」

 オークションが終わり、外で起きた騒動の話をホテルの支配人から聞いたユーノは、散歩がてらに外を歩いていた。
 破壊されたガジェットの残骸を眺めていたユーノは、不意に後ろから掛けられた聞き慣れた声に、少し驚きつつ振り返る。

「久し振り、また無理してない?」
「……一応、ね」

 会う度に交わすこの言葉。
 無理をしていないかと聞かれれば、答えは間違いなくNOなのだろうけど。
 つい最近も、彼女の使い魔であるアルフと司書達に、こっぴどく叱られた。

「……アルフに聞いたよ、相変わらずなんだね」
「こればっかりはどうしようもないよ」

 叱られたと言っても、アルフが無限書庫に顔を出したのは本当に久し振りだった。
 まだ司書だった頃はアルフに毎日手伝って貰っていたが、クロノとエイミィの子どもが生まれてからは家事と育児の手伝いをしている。
 正直言って、アルフが抜けた穴はかなり大きい。彼女の能力は、現在の副司書にも全く引けを取らないのがその理由。
 それだけ、そのアルフの主であるフェイトが優秀だという事……まぁそんなのは何を今更、なのだが。

 そんな事をどこかぼんやりとした頭で考えていると、フェイトが溜息を吐いていた。

「いつもの事だけど、無理はしたらだめだからね」
「……とりあえず、気をつけるとは言っておくよ」
「その返事はもう聞き飽きた」
「これ以外に言葉が浮かばない」

 また溜息を吐くフェイトにユーノは苦笑する。
 このままだと埒が明かないので、話を変える事にした。

「ガジェットが襲って来てたんだね」
「……うん、シグナム達とフォワード陣の皆が倒してくれたんだ」

 話を変えられた事に納得がいかないような表情をしたフェイトだったが、
 ユーノと同じ考えなのか、少し怒った顔をしただけで話を繋げた。

「レリックについては調べてるけど……かなり情報が少ないんだ。
 残ってる文献も殆ど無いし、資料の方はもう少し待って欲しいって、はやてに伝えてくれるかな」
「そういう事はなのはに言えば良いと思うよ?」
「……今僕と話をしてるのはフェイトじゃないか」
「それはそうだけど……」

 
 なのはの話になると、ユーノは多かれ少なかれ反応する。
 少し悪いと思いつつも、親友である二人に上手くいって欲しいと願うフェイトは、無理に話を振っていた。

(やっぱりこんなんじゃ……。でもほんとに……ユーノは責任感と自己犠牲心が強過ぎる)

 伊達に時空管理局の執務官はやっていない。
 洞察力や観察力は、はやてにだって負けていないと自負しているフェイトが、ユーノと会う度に感じ取る。
 責任感は生まれつきのものであるのだろう。

 が、それ以上にユーノの自己犠牲意識は異様な程強い。
 両親の顔を知らず、家族だったスクライアの一族とも離れ、レイジングハートとも別れた事。
 彼と親しい間柄の者は皆、管理局の最前線で活躍するエースばかりで、彼の能力は殆ど後方支援のみである事。
 長い時の中を無限書庫という閉ざされた空間で過ごして、極めつけはあの事故の事。
 なのはを傍で守る事も出来ず、なのはが苦しんでいるのをただ見ている事しかできなかったと思い込んでいる事。

 多分、ユーノは自分の事をいてもいなくても大して変わらない存在だなどと思っているのだろう。
 ……本気でそう思っているのであれば、平手打ちの一発でも入れてやりたい気持ちに駆られる。

 ユーノがジュエルシードを見つけなければ、なのはやはやて、アリサにすずか、ヴォルケンリッター……そして、今の家族とも出逢えなかっただろう。
 それどころか、一生を今は亡き母の操り人形として生きて、見捨てられて死んでいたかもしれない。
 そう考えれば、ユーノはフェイトにとって命の恩人とも言えるのだが。 

(……絶対、僕は何もやってない、って言うんだろうな……)

 フェイトやはやて、クロノにリンディ……彼と関わりを持つ人が何と言おうが、なのはの言葉ですら、ユーノは頑として聞き入れない。
 それでも、なのはと話をしている時のユーノの表情は、他とは明らかに違うのだ。
 それが意味するのは、ユーノの心のどこかで、まだユーノがなのはの事を――

「フェイト?」

 考え込んでいたフェイトに、ユーノが疑惑の表情を浮かべて名を呼んできた。

「どうかした?」
「……なんでもない」
「……そう」

 もう少し自分の事も考えろ、なんで他人の事しか考えられない。
 が、それもきっと、フェイトが言ったのでは意味がない。

(なのは……。ユーノを救えるのは、やっぱりなのはだけだよ)

 それをなのはに伝えるのは酷な事だと思い、ずっとフェイトは伝えず仕舞いだった。
 ユーノがこうなってしまった原因は、なのはにもあったから。
 なのはがその事で思い詰めていたのも知っていたから。
 それを伝えてしまったら、なのはが壊れてしまうんじゃないかという恐怖もあった。

 でも、今のなのはは違う。
 十年前、敵である筈のフェイトに必死で呼び掛けて続けてくれたあの時のなのは。
 過去のそれよりずっと強い精神と優しさ、確固たる決意の顕れが、一片の穢れもなく伝わってきた。

 だから、今なら伝える事が出来る。
 なのはは壊れたりしない。絶対に大丈夫。

「ユーノくーん! フェイトちゃーん!」

 なのはの声が背中から聞こえたのは、フェイトが決意を固めた時と同時だった。

「なのは……」
「なのは、ちょっと良いかな?」
「ふえ?」

 フェイトは、複雑な表情でなのはを見るユーノを横目に、
 駆け寄ってきたなのはの腕を掴んで有無を言わさず連れて行く。

「ユーノ、ここにいてね。どこかに行ったりしたらザンバー叩き込むよ」
「え? う、うん……」

 そして茫然と立ち尽くすユーノに、歩きながら釘を刺す。


「あの……フェイトちゃん?」
「……」

 ユーノに声が届かないくらいの距離まで離れて、フェイトとなのはは向かい合う。
 困惑しているのか、少し不安げに聞いてくるなのは。
 まだどこかで恐れる自分を抑え込み、フェイトは口を開いた。

「なのは、あのね」
「うん……?」
「私、なのはが壊れちゃいそうで、どこかに行っちゃいそうで……。凄く怖かったから、今まで言えなかったんだけど……」
「……うん」

 逃げるな、伝えるんだ、なのはが待ってる。
 なのはなら大丈夫、どこにも行ったりしない、きっと大丈夫。
 荒れる心を静めるように、フェイトは自分に言い聞かす。
 そんな時、ふと目に入った待機状態のバルディッシュが、一瞬だけ光を放った。

(バルディッシュ……ありがとう)

 それだけ、たったそれだけの事で、フェイトの心は嘘のように静かになった。
 そして、なのはの瞳を己の瞳で真っ直ぐに捉える。

「ユーノを……、ユーノ・スクライアを孤独から救えるのは、なのはだけなんだ。私でも、はやてでも、他の誰でもない。高町なのは、あなただけ。
 だから……、だから、ユーノを助けてあげて欲しい。私には家族ができたけど、ユーノには……それが……」

 そこまで言って、フェイトは続きを言えなかった。
 なのはが、フェイトを抱き締めていたから。

「ありがと……フェイトちゃん……」
「なのは……」
「フェイトちゃんにも、ほんとに心配掛けちゃってたんだね……」
「……当たり前だよ。なのはもユーノも、私の大切な……大切な人なんだから……」
「うん……」
「だから……、二人で一緒に幸せになってくれないと……私、怒るからね?」
「……わかった」
「約束だよ?」
「うん……約束するよ」
「絶対?」
「絶対。決めたんだ、もう逃げないって」
「そっか……。じゃあ、あの駄々っ子をなんとかしてあげてね」
「うん、任せて」
「なら、いってらっしゃい」
「いってきます!」

 なのはがユーノの元へ走り去って行くのを、フェイトは穏やかな瞳で見守る。
 そして、なのはの背中が見えなくなってふと目線をずらすと、そこには待機状態でふわふわ浮いているレイジングハートがいた。

「……レイジングハート?」
《なんでしょうか?》
「なのはと一緒にいなくていいの?」
《二人水入らず、です》

 その言葉を聞いて、フェイトは思わず笑ってしまった。
 宝石がそんな事を言うなんて、妙にシュールな光景に見えてしまったから。

《……笑うのは失礼でしょう》
「ごめん、なんだかおかしくて……」
《……別に構いませんが。そんな事より、やはりあなたも同じ事を考えていらしたのですね》
「同じ事……?」
《私も、マスターなのはにあなたとほぼ同じ意味の言葉を伝えましたので》
「えっ!?」

 フェイトは目を丸くして驚いた。
 レイジングハートも同じ事を……? じゃあ、私のした事って一体……。
 フェイトはかなりのショックを受けてその場に棒立ちになってしまった。

《気にする必要はありません。あなたが決意して伝えた事を、マスターなのはが無碍にする筈がないでしょう?》
「そう……かな?」
《無論です》
「うぅ……でも……」

 あんなに悩んで悩んで決意して伝えたのが二番目だったとは……、フェイトにすれば相当きつい。

《それに、私はほぼ同じだと言いました》
「でもそれって、あんまり変わらないんじゃ……」
《そんな事はありません。あなたの言葉には、私ではどうしても理解しきれないものがありますから》
「え?」

 フェイトは、この日何度目かの驚きの声を上げた。

《家族……。機械である私には、その言葉の意味全てを理解する事はできません》
「レイジングハート……」
《ですから、あなたの言葉の方が、マスターなのはの心に深く伝わっているでしょう》

 フェイトは隣で浮いているレイジングハートを見つめる。
 その真紅の宝玉からは、どこか寂しげな印象が感じ取れた。

「レイジングハート、今寂しい?」
《……と、いいますと?》
「なのはの傍にいられなくて」

 フェイトの急な問い掛けに、レイジングハートは十秒程沈黙してから答えた。

《……寂しい……。そうですね、私は寂しいのかもしれません》
「なら、なのはとユーノの想いがすれ違っていたら?」
《寂しい……のでしょうね》
「じゃあ、マスターがユーノからなのはに変わった時は?」
《……》
「言いたくないなら、無理に言わなくていいんだよ」

 無理に聞き出したい訳では無い。 でも、フェイトには確かめたい事があった。
 今度は数分間沈黙して、レイジングハートはゆっくりと、音声を発していく。

《……マスターなのはが私のマスターになってから闇の書事件が終わるまで、マスターなのはとマスターユーノは共にありました。
 けれど、マスターユーノが無限書庫に籠りっきりになって、殆ど会えなくなると分かった時は……、システムエラーが堪えませんでした》
「そっか……。私も、どうして今の今まで気づかなかったのかな。レイジングハート、あなたはなのはとユーノの立派な家族だよ」
《なぜ、機械の私がですか?》

 機械だから。
 そんなのは決して理由になんてならないのに。
 そういうところはレイジングハートも、ユーノに似てるなと思うフェイト。
 いや、ユーノがレイジングハートに似たのだろうか?
 フェイトは無意識のうちに、レイジングハートを両手で優しく包み込んでいた。

「レイジングハート、血の繋がりなんて、家族にとっては関係ないんだよ。それは、私が良く知ってるから。
 それにね、なのはとユーノは、レイジングハートがいないときっとだめなんだ。
 レイジングハートだって、なのはとユーノとずっと会えなくなったりしたら、嫌だよね?」
《そう……ですね》
「家族はね、支えあってこそ家族なんだ。血の繋がりだとか、人間じゃないだとか……。そんな事を気にしてる家族は、家族なんかじゃない。
 誰か一人でも欠けたら、凄く不安になって、皆一緒なら、凄く幸せになれる……それが家族だって、私は信じてる」
《……ありがとうございます、フェイト・T・ハラオウン》
「フェイトでいいよ」
《そうですか? なら、ありがとう……フェイト》
「どういたしまして」

 フェイトが掌の上で優しい光を放つレイジングハートを、慈愛の瞳で見る。

「なのはとユーノ、上手くいくといいね……」
《大丈夫でしょう》
「レイジングハートにそう言われると、なんだかそんな気がするから不思議だよ」
《当然です、フェイト。……なのはとユーノは、私の家族なのですから》
「……そうだね。うん、なら大丈夫だ」
《無論です》




 To be continued...




あとがきらしきもの

こんにちはとこんにちわ、どちらが正しいのやら。
ん〜、てかこれ最後、フェイト×レイジングハート……?
バルディッシュ、最後はさっぱり喋ってないな……まぁ元々無口だからなぁ。
むぅ、何故か三話構成で終わらなかった……すいません、四話構成になります。
多分、次で一先ず終わりますので。
なぜ一先ずなのかと言うと……、この短編SS(四話じゃ中編とは言わないと思ったので)、いきなり書き始めたもんで。
んで、書いてる内に最初からもっと深く掘り下げて書くべきだったなと……。
最初のユーノの話なんて滅茶苦茶短い……。なので、もし時間があれば加筆修正するなりなんなりしたいなと。
とりあえず、次は本題に立ち戻ってなのは×ユーノ。どう決着をつけるかはまだ色々試行錯誤中です。
……てかこれ、何気に8・9話+7話になっちゃってるな〜、更に補完と言えるかすら危うい……。
とにかく書いてて楽しいのは楽しいので、それはいいかなと。
それでは、少しでも読者様の息抜きとなっていれば幸いです。


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