時空管理局通路 時刻18:39 医務室へと繋がる通路を、リンディは一人険しい表情のまま歩いて行く。 あの資料に載っていた事実、そして、一番信じたくない言葉も……頭から離れない。 (私もまだまだね……) ふぅ……、とまた一つ息を吐いて内心呟く。 そろそろ医務室に着く。 こんな表情のまま部屋に戻れば、あの子達を心配させてしまうだろう。 本当に優しい子ばかりなのだから……。 (いつも通りでいないと……。余計な心配をかけるような真似はしたくないわね) そう考え、いつもの表情に戻したリンディは医務室に入る。 「母さん」 「お帰りなさい、艦長」 まずクロノが反応し、続いてエイミィが口を開いた。 「ええ、君は……寝ちゃってるのね」 「はい、まだ疲れが抜け切っていないみたいですから」 「そう……」 「艦長?」 「どうかしたの? エイミィ」 「……何かあったんですか?」 どうしてこの子はこう……、鈍感な息子のコンビとしては妙に敏感なのがエイミィだ。 「何でもないわ」 随分と嘘をつくのが上手くなっていたと思っていたのだが……。 この子の前では完璧には隠せなかったようだ。 息子のクロノは頭に?マークを浮かべているが。 「そうですか……、ならいいんですけどね」 そう言って、エイミィは微笑む。 (エイミィ……ありがとう) 心配してくれたエイミィに、心の中で感謝するリンディ。 それと同時に、心配をかけてしまって申し訳ない気持ちも入り混じったが。 (いずれは、皆にも話さなければならないんでしょうけど……) 隠し事は、どれだけ必死に隠していてもいつかは必ずわかってしまう。 それは仕方が無いだろうが、それも承知の上であの子達を預かると言ったのだ。 「ん……」 そこまで考えていると、が目を覚ました。 「あ、リンディさん、おかえりなさい」 上半身を起こして、笑顔で言う。 「ただいま、君」 その笑顔を見ただけで、先程までの不安は吹き飛んでしまった。 この子は何も変わったところは無い、純粋な子なのだと再確認したリンディは、笑って答えた。 《上層部からは何か言われましたか?》 が尋ねる。 「ええ。あなた達三人は、私達アースラスタッフが預かる事になりました」 数秒の沈黙の後。 「「 ええええええ!? 」」 とエイミィが大音量で叫ぶ。 「本当なんですか艦長!?」 「こんな短期間に決まるなんて、グレアム提督に言っておいて良かったな」 《ということは、俺達はアースラに乗っても良いのか?》 「そうです。手続きとか色々していたら、もうちょっとかかっちゃうんだけど」 《本当にお世話になってしまっていますね……》 「いえいえ、アースラの艦長として、あなた達のような優秀な魔導師とデバイスを乗せられるなんて助かりますわ」 「優秀ではないと思うんだけどな〜」 「何言ってんの。クロノ君と互角にやりあえる魔導師なんて、管理局でもそうそういないんだから」 「優秀かどうかはともかく、一隻の船にAAA+が2人も乗っているとなると周りがうるさいぞ」 《そうなのか?》 「管理局の人手不足は深刻だからな」 「見る限りでは、結構人はいると思うんだけど」 「私達が管理してる範囲は広いなんてもんじゃないから、いくら人数がいても足りないんだよね〜……。 それに、なかなか高ランクの魔導師はいないし、育成するのもすんごく大変なんだな、これが」 《なるほど……。それでクロノ君と互角に渡り合えたはとても魅力的に見えたんですね》 「結局はそんなところね」 「ところで、次元と次元の間を行き来できるんでしょ? アースラって」 「ああ。管理世界から管理外世界までをカバーする為に造られた艦船だからね」 「ちゃんとビーム砲だってついてるんだよ〜」 「な、なんか凄いんだね……」 《そう考えると少し危なっかしいものに聞こえるな》 「滅多に使うことはないんだがな。大抵は武装局員とかが出て行って鎮圧したりするから」 「じゃあ僕達はそれを手伝えばいいんだね」 「簡単に言えばそうなるな」 《でも、いくら正式に決定しても私達は何の肩書きも持っていないし……、それは大丈夫なんですか?》 「そこは上がなんとかしてくれるでしょう。いざという時は、私があの手この手を使って周りを納得させますしね」 《そうですか》 とリンディの2人はクスクス笑っている。 どうやら気が合うらしい。 「とりあえずは、新しい処遇があなた達に伝えられるでしょうから、それまでもう少しこの部屋にいて頂戴ね」 「早くアースラに乗りたいんだけどな〜」 《我侭を言うものじゃないわ、》 《いつ頃になるかはわからないか?》 「ん……そうね……、明日にでも知らされるでしょう」 《そうか、早いな》 「もうすぐアースラも任務につくからね」 「じゃあ僕達も早速任務って事か〜」 「それ程危険な任務じゃないから大丈夫だろうけどな」 「ま、最初から大変な任務ってのも困るけど」 《それもそうだな》 「とにかく、明日から忙しくなるでしょうし、今日はゆっくり休んでね」 「わかりました」 リンディ達が部屋を出て行った後、はまた眠ってしまった。 《……もしの魔力が暴走したら、私達だけで止められると思う?》 《どうだろうな……。だが、そうなったら何があっても止めるしかない》 《そうね……何があっても》 《……ああ》 あとがきらしきもの 優「やっと後編が書けた……」 ク「説明文もう少しいれたらどうだ」 優「今回はこれで勘弁して下さい、いやマジで」 ク「ダメ」 優「この鬼! 人でなし!」 ク「黙れ文才無し」 優「うがっ(以下略)」 エ「一撃必殺だねー……それ」 BACK NEXT 『深淵の種 T』へ戻る |