――二年後 巡航L級8番艦次元空間航行艦船"アースラ"艦橋 4月26日 時刻20:27 「……にしても暇だん?!」 が呟くのを物凄い速さでクロノの手が制していた。 「それを言ったらロクな事が起こらないって何度も……」 クロノの言葉を遮る様に、ジャストタイミングでアースラの警戒音が鳴り響く。 《《「 ……はぁ…… 」》》 クロノ・・の三人が深い溜め息を吐く。 二年前にが"暇だ"と言って二人が重症を負って以来、彼が"暇だ"と言う度にアースラは厄介な事件に巻き込まれる様になっていた。 かなり深刻なジンクスを背負ってしまっているなのだが、どうしても暇な時は暇だと言ってしまうのだった。 「第97管理外世界"地球"にて小規模次元震の発生を確認」 アレックスが状況を知らせる。 「次元震の発生地点は極東地区日本・海鳴市、同地点に2名の魔導師及び両者の使い魔と思われる動物を確認」 ランディも新しい情報を知らせる。 「えっと……もしかしなくても僕のせい?」 《……、まさか自覚してないの?》 《事件発生率100%の記録更新だな》 「うっ……」 「ま、まぁ君も悪気があって言ってる訳じゃないんだし……」 エイミィが複雑な表情で彼をささやかにフォローする。 「そ、そうね、起きてしまったものは仕方がないわ」 リンディもまた複雑な表情でエイミィに便乗する。 「次元震の発生原因はロストロギアと思われます」 「そう……。では、次元震が発生し、ロストロギアも確認された為、この件は最優先で対処します。 二組の捜索者の動きには十分注意を払うように」 「「「「「 了解! 」」」」」 : : : "アースラ"艦橋 4月27日 時刻6:15 「皆どう? 今回の旅は……順調とは言えないわね……」 「う……」 艦橋に入っていつも皆にかける言葉を言ったはいいが、今回は普段通りとはいかなかった。 故意では無いにせよ、そのジンクスを発揮してしまったがみるみる沈んでいく。 それを見て、無言でクロノが彼の肩をポンと叩いた。 「はは……まあ……。現在第三船速にて航行中です。目標次元には、今からおよそ160ベクサ後に到達の予定です」 「前回の小規模次元震以来、特に目立った動きは無いようですが……。二組の捜索者が再度衝突する危険性は非常に高いですね」 アレックス・ランディ両名が状況及び情報を伝える。 「そう」 リンディが艦長席に座りながら答える。 「失礼します、リンディ艦長」 エイミィがリンディに砂糖のたっぷり入った紅茶を出す。 「ん、ありがとね、エイミィ」 礼を言い、紅茶を口に運ぶ。 「そうねぇ……小規模とはいえ、次元震の発生は……ちょっと厄介だものね」 そして少し厳しい表情をして、前方のモニターを見据えるリンディ。 「危なくなったら、急いで現場に向かって貰わないと、ね? クロノ、君?」 そう言って、二人のいる方へ目をやる。 「大丈夫、わかってますよ艦長」 「責任は取ります!」 《いや、別に責任がある訳じゃないと思うが》 「まぁ……僕達はその為にいるんですから」 「そうだね、やるからには全力で行きます」 「ん、頼りにしてるわよ」 「「 了解! 」」 : : : 同場所 同日 時刻16:10 「この狼とフェレットみたいなのって人間かな?」 管制室内にて捜索者達の魔力等の分析を行っているエイミィにが問いかける。 「ん〜……狼は普通に使い魔だと思うけど、このフェレットは魔導師がトランスフォームしてるんじゃないかな? ま、情報が少な過ぎるし絶対とは言い切れないけどね」 とんでもない速さで手を動かし続けながらエイミィは答える。 「確かに、これだけで全て判断するのは無理だ。でも、もしそうだとしたらフェレットモドキだな」 「クロノ……それはひどいと思うよ?」 何気無い会話をする三人。 一応任務中だというのにさっぱり緊張感が無いのはなぜだろうか。 「ま、もうすぐ目標次元に着くんだし、二人とも艦橋に上がった方がいいよ。分析は出来る限りしておくから」 「わかった」 「それじゃ分析よろしくね、エイミィさん」 「はいは〜い」 「でも、今回はかなりややこしくなりそうな予感がするんだよね……」 艦橋へ続く通路を歩いているが急に呟く。 《の悪い予感は良く当たるからな》 「というより、ジンクスが出た時点でややこしくなるのは確実なんだけどな」 「うっ……」 《ま……仕方ないわね……》 またもや沈んでしまったの腕を引っ張って艦橋に行くクロノ。 の予感通りにならないよう祈るクロノ・・だった。 あとがきらしきもの 優「第七話後編にしてようやく原作沿いになりましたね!?」 ク「いや、聞いてどうする」 優「次はいよいよメインヒロインが登場しますよ〜」 エ「やっとだねー……」 優「長かったですよ、えぇ」 リ「やっと原作沿いになって一安心ってところね」 優「やっとって言わないで下さい(泣)」 エ「とにかく、次回もお楽しみに!」 BACK NEXT 『深淵の種 T』へ戻る |