"アースラ"艦橋 4月27日 時刻18:32 「現地では既に二者による戦闘が開始されている模様です」 アレックスが現地の状況を伝える。 「中心となっているロストロギアのクラスはA+。動作不安定ですが、無差別攻撃の特性を見せています」 ランディも新しく入ってくる情報を伝えていく。 「次元干渉型の禁忌物品……、回収を急がないといけないわね。 クロノ・ハラオウン執務官、・嘱託魔導師、出られる?」 リンディが立ち上がって二人に問う。 「転移座標の特定はできてます」 「命令があればいつでも行けますよ」 クロノ、の順に答える。 「それじゃクロノ、君、これより、現地での戦闘行動の停止とロストロギアの回収、両名からの事情聴取を」 リンディが力強く命令を下す。 「了解です! 艦長」 「了解!」 二人が力強く答えるのを見て、リンディが無言で頷く。 「気をつけてね〜」 二人は転送ポートの上に立つと、先程までの凛とした態度から一変して、いつものどこか抜けたような声で見送るリンディ。 一見するとふざけている様にも見えるが、何気なく緊張をほぐしてやるところが彼女の優秀な面の一つであろう。 「はい……行ってきます……」 「あはは、クロノはちゃんと無傷で連れ帰ってきますから」 「ええ、よろしくね君」 「あのなぁ……まあいい、行くよ」 「了解了解」 出撃直前でもこの余裕、この三人は相当な大物である。今更かもしれないが。 二人は目を閉じて魔法陣を展開させ、目標に向けて転移する。 それを見送って、リンディは厳しい表情に戻してモニターに映っている二人の少女を見据えた。 海鳴市内・海鳴臨海公園 同日 時刻18:36 宙に浮いているジェルシードが美しく輝く。 それの上空に、二人の少女が対峙している。 一人は白いバリアジャケットを身に纏い、美しい赤い宝石のついた杖を手にしている少女。 もう一人は、黒いバリアジャケットに黒い戦斧を持つ、こちらもまだ年齢の幼い少女だった。 先程、両者の砲撃魔法でジュエルシードを封印し、それを賭けての戦いが起こる、まさに一触即発の状態となっている。 「ジュエルシードには……衝撃を与えたらいけないみたいだ……」 美しい金の髪と赤い瞳の黒衣の少女が口を開く。 「うん……昨夜みたいな事になったら……、私のレイジングハートも、フェイトちゃんのバルディッシュも……かわいそうだもんね」 それに対して、艶のある茶色の髪に鳶色の瞳の白衣の少女が答える。 「……だけど……譲れないから」 その言葉で僅かに揺れた心を静める様に、バルディッシュと呼ばれた戦斧を構えるフェイトと呼ばれた少女。 《Device Form》 主の意思を反映させる様に、バルディッシュが基本形態へ戻る。 「私は……フェイトちゃんと話がしたいだけなんだけど……」 そう言って、淋しい様な悔しい様な表情を見せる白衣の少女。 《Device Mode》 レイジングハートと呼ばれた杖も基本形態へと戻る。 「私が勝ったら……ただの甘ったれた子じゃないってわかって貰えたら……お話……聞いてくれる?」 決意を固めた鳶色の瞳が赤い瞳を見据える。 「……」 それを無言で受け止め、こちらも覚悟を決めた赤い瞳が鳶色の瞳を見据える。 一時の静寂が流れ、両者が同時にデバイスで攻撃を仕掛ける。 その刹那、両者の間に閃光が走り、魔法陣から二人の少年が飛び込んだ。 「ストップだ!!」 「それまでだよ!!」 バルディッシュをのが、レイジングハートをクロノがS2Uで受け止める。 「ここでの戦闘行動は危険過ぎる」 「あっ……」 「っ……」 二人の少女が驚きを隠せずに声を上げる。 「時空管理局執務官、クロノ・ハラオウンだ」 「同じく時空管理局嘱託、・」 「詳しい事情を聞かせてもらおうか?」 二人がそれぞれ対峙する少女を睨みつける。 「……!」 狼がそれを見て戦闘態勢をとる。 「時空管理局……?」 フェレットは木の枝の上から聞き慣れた名を耳にして驚く。 「とりあえず、二人とも武器を引くんだ!」 が警告し、四人が地面へ降り立つ。 「このまま戦闘行為を続けるなら……」 クロノも警告をしようとするが、上空からの魔力反応がそれを遮る。 「「 っ!? 」」 二人が同時に反応し、三つの魔力弾が飛んでくるのを確認する。 「ちぃっ!」 が舌打ちし、を前面に出す。 《Fortification》 が魔力防御壁を発生させてそれを全て弾き飛ばす。 「話をする気は無いみたいだね」 「……ああ」 二人が上空の狼を睨んで身構える。 「フェイト、撤退するよ! 離れて!」 狼が先程より大きく強力な魔力弾を生成する。 それを見て、動揺しつつも上空へ退避するフェイト。 魔力弾が地面に接触し、爆発を伴って土の上に敷かれたコンクリートを吹き飛ばして爆音と砂煙を上げる。 クロノに、そして白衣の少女がそれを回避する。 「っ……!」 その隙を突いてジュエルシードへ手を伸ばすフェイト。 「あっ!」 白衣の少女がそれに気付いて声を上げる。 《Edge Move》 しかし、直前でが彼女の前に立ち塞がる。 「くっ……邪魔を……するな!」 それを見てに斬りかかるフェイト。 「うあっ」 しかし、突如砂煙の中から魔力弾が放たれ、直撃を受けたフェイトは撃ち落とされる。 「フェイトー!!」 「フェイトちゃん!!」 それを見て狼と白衣の少女が悲鳴にも似た声をあげる。 狼がフェイトを地面に落下する前に受け止める。 それを冷たい視線で見据え、クロノは追撃の魔力弾を放とうとし、は高速で二人に攻撃を仕掛ける。 「だめぇ!!」 「なっ!?」 「くっ!?」 突如、敵であろう筈のフェイトと狼の前に立ち、両手を広げる白衣の少女。 「やめてっ! 攻撃しないでっ!!」 二人は驚くがなんとか攻撃を止める。 「……っ」 「逃げるよフェイト! しっかりつかまって!」 「はぁ……はぁ……」 苦しそうに息をするフェイト。 それを見て狼は急いでその場を離れる。 「あっ……」 フェイトが立ち去るのを確認した白衣の少女は力が抜けたように立ち尽くす。 「あっちゃ〜、逃げられちゃったか……」 「……」 は困った表情をしながら、クロノは無言で地面に降り立つ。 その場に静寂が訪れる。 "アースラ"艦橋 同日 時刻18:42 「戦闘行動は停止、捜索者の一方は逃走」 アレックスが状況を伝える。 「追跡は?」 「多重転移で逃走してます。追いきれませんね」 ランディがリンディの問いに答える。 「そう」 それまで立ってモニターを見続けていたリンディは席に座る。 モニターにはクロノがロストロギアを確保した映像が映し出される。 「ま、戦闘行動は迅速に停止、ロストロギアの確保も終了・・・。良しとしましょう、事情も色々聞けそうだしね」 空間モニターを発生させるボタンを押すリンディ。 海鳴市内・海鳴臨海公園 同日 時刻18:43 『クロノ、君、お疲れ様』 目の前に魔法陣が浮かび上がり、リンディが映し出される。 「すいません、片方は逃がしてしまいました」 クロノが謝る。 『うぅん、ま、大丈夫よ』 「そうそう、クロノはいちいち気にし過ぎなんだって」 《お前は気にしなさ過ぎだ》 「うっ……」 《二人とも、今は任務中なのよ?》 それを見てリンディはクスクス笑いながら話を進める。 『でね、ちょっと話を聞きたいから、そっちの子達をアースラに案内してくれるかしら?』 「了解です、すぐに戻ります」 「って事だから、ちょっとついて来てね」 二人が少女とフェレットを見据える。 「あ、はい……」 少女は目を点にしていたが、声を掛けられ驚いた様に返事をする。 その後、三人と一匹(?)は光に包まれてその場から消えた。 残ったのは、悲惨な状態になってしまった公園の床のみとなっていた。 あとがきらしきもの 優「長らくお待たせしました……遂に主人公とその使い魔……じゃなかった、フェレット君の登場ですよー!!」 なのは「あの……えっと……ど、どうも……」 ユーノ「どうも……ってちょっと!」 優「ん? どうかした?」 ユ「僕は使い魔じゃないしフェレット君でもないんですよ?!」 優「まあまあ、細かい事は気にしない気にしない♪」 ユ「こ、この……」 な「お、落ち着いてユーノ君」 ク「ていうか管理人」 優「せめて名前で呼んでくれないかな? クロノ君」 ク「堂々と二人を拉致っておいてよくそんなにハイテンションでいられるな」 優「あ〜、いや〜、あははははは、じゃ!」 ク「まてええええええええ」 ユ「なんだか賑やかな人達だね……」 な「にゃはは……とりあえず、後編もお楽しみにね!」 BACK NEXT 『深淵の種 T』へ戻る |