"アースラ"艦内会議室 同日 22:22


「と、いう訳で……、本日0時をもって、本艦全クルーの任務はロストロギア……、ジュエルシードの捜索と回収に変更されます。
 また本件に於いては特例として、問題のロストロギアの発見者であり、結界魔導師でもあるこちら……」
「はい! ユーノ・スクライアです!」

 かなり緊張した様子で立ち上がるユーノ。

「それから、彼の協力者でもある現地の魔導師さん」
「あ、た、高町なのはです!」

 こちらもまた緊張した様子で立ち上がるなのは。

「以上二名が、臨時局員の扱いで事態に当たってくれます」
「「 よろしくお願いします 」」

 二人が同時に頭を下げて挨拶(?)をする。
 それを納得がいかない表情で見るクロノ。

「……ぁ、えへへっ」

 その視線に気付いて、微笑んで返すなのは。

「っ!? ……ふんっ」

 それを見て顔を真っ赤にしてそっぽを向くクロノ。
 またエイミィのからかいネタが増えたという訳だ。

「何顔真っ赤にしてんのさ、クロノ」
「……うるさい」
「「 ? 」」

 なのはとは良く分からないらしく、不思議そうにクロノを見る。

「……くぅ〜〜〜っ」

 ユーノだけはそれが面白くない様で、物凄く敵意を剥き出しにしてクロノを見ているが。

「そこで、二人の護衛及び遊撃を君に頼む事になりました」

 その様子をクスクス笑いながら見ていたリンディが話す。

「よろしくね、二人とも」

 そう言って二人に微笑む

「「 こちらこそ! 」」

 まだ緊張している二人は完璧に息の合った返事をしていた。


"アースラ"艦橋 4月28日 時刻8:20


「じゃあ、ここからはジュエルシードの位置特定はこちらでするわ。場所がわかれば、現地に向かって貰います」
「「 はい! 」」
「了解!」

 二人は相変わらず息がピッタリである。
 はそれに驚きつつ、少し遅れて返事をする。

「艦長、お茶です」

 エイミィがお茶を持ってくる。

「ありがと」

 そのお茶にスプーンにてんこ盛りの砂糖を2杯、さらにミルク(?)を全部入れてしまった。

「ん〜コクッ……あっはぁ〜……」

 幸せそうな顔でそれを普通に飲むリンディ。

「ぅぁ〜……」

 なのはは空いた口が塞がらない。
 その味を想像しただけでも胃が痛くなりそうだった。

「そういえばなのはさん」
「ぁっ?!」

 急に声をかけられ驚くなのは。

「学校の方は大丈夫なの?」
「あ、はい、家族と友達には説明してありますので」

 なぜかなのはは右手を上げて答えていた。


海鳴市郊外 同日 時刻14:27


 木が生い茂る市の郊外に、半円形の結界が展開されている。

「クエエエエエエエエエエエエ!!」

 巨大な鳥が緑色の鎖に絡まれて咆哮をあげる。

「捕まえた! なのは!」

 その鎖を操っていたのは結界魔導師のユーノであった。

「うん!」
《Sealing mode, setup》

 レイジングハートが変形し、三枚の羽状の光が発生する。
 そして、レイジングハートから複数の光が鳥に向かって突き進む。

《Stand by ready》
「リリカルマジカル! ジュエルシード、シリアル8! 封印!」
《Sealing》

 先程の光が鳥に突き刺さっていき、消滅して宝石に変わる。
 封印されたジュエルシードがレイジングハートに取り込まれる。

《Receipt number eight》
「二人とも良いコンビネーションだね」

 護衛及び遊撃としても出撃していたが、全くやる事もなく任務が終了していた。

「えへへ」
「ありがとう」

 なのはは照れて喜び、ユーノが素直に礼を言う。


"アースラ"艦橋 同日 同時刻


「状況終了です。ジュエルシード、ナンバー8、無事確保。お疲れ様、なのはちゃん、ユーノ君、君」
『は〜い』
『僕はなんにもしてないけどね……』
『あはは……』

 なのは、、ユーノの順に話す。

「ゲートを作るね、そこで待ってて」

 ランディが三人へ応対していく。

「うぅん、二人ともなっかなか優秀だわ。このままうちに欲しいくらいかも」

 足を組んで二人の優秀さに感心するリンディ。
 まだ9歳の二人をスカウトしたいと言っている事から、管理局は採用にあまり年齢を問わないようである。



"アースラ"艦内通路 4月31日 時刻17:11


「フェイトちゃん、現れないね……」

 通路を歩いていたなのはが呟く。
 彼女がアースラに乗り込んだ理由、一つはもちろんユーノの手伝いとして始めたジュエルシード集めだが、
 もう一つ……何度もぶつかった、綺麗で悲しい目をした少女と話をする為だった。
 しかし、アースラに乗り込んでから三日目となったが、その少女がなのはの前に現れる事は無かった。

「うん……こっちとは別にジュエルシードを集めていってるみたいだけど……」
「管理局はかなり大きな組織だからね……、一個人の力で相手に出来る程軟なものじゃないんだ。
 だから、なるべく僕らとの接触を避けてるんだろうね」

 ユーノ、の順に答える。

「そう……なんだ……」

 なのはが俯く。

「ま、念ずれば叶うって言うし、諦めないで」
《そうね、目的が同じならその内会えるはずよ》
《嫌でもな》
「三人の言う通りだよ。頑張ろう、なのは」

 、ユーノが元気付けようとする。
 ……の発言はどうかと思うが。

「うん……ありがとう、皆……」

 それに感謝して、また少し決意を固めたなのはだった。



"アースラ"艦橋 5月7日 時刻6:43


 なのはとユーノがアースラに乗り込んでから10日目。
 集めたジュエルシードはなのはが3つ、フェイトが2つ、そして・・・

「残り6つ……見つからないわね〜……」

 リンディが呟く。

「捜索範囲を地上以外まで広げています。海が近いので、もしかするとその中かも……。
 例の黒い服の子も併せて、エイミィが捜索してくれています」

 それにクロノが答える。

「……そう」


 "アースラ"艦内食堂 同日 同時刻


「ん〜……はぁ、今日もはずれだったね〜……」

 クッキーを口に運びながら、なのはが言う。

「もう陸には無いかも知れないな〜」

 そう言うと、一気に三個のクッキーを口に含む
 彼のクッキーの量は二人のそれの三倍近くある。

「うん……もしかしたら、結構長くかかるかもね……」
「そうだね……こればっかりはどうしてもなぁ……」

 ユーノは申し訳なさそうに、は困った表情をする。

「なのは……ごめんね」

 ユーノがなのはに謝る。

「?」

 急に謝られたなのはは首を傾げる。

「寂しくない?」
「別に……ちっとも寂しくないよ。
 ユーノ君と一緒だし、君達もいるし……一人ぼっちでも結構平気。ちっちゃい頃は、よく一人だったから。
 ……うち、私がまだちっちゃい頃にね、お父さんが仕事で大怪我しちゃって、しばらくベットから動けなかった事があるの。
 喫茶店も始めたばかりで、今ほど人気が無かったから、お母さんとお兄ちゃんは、いつもずっと忙しくて……。
 お姉ちゃんは、ずっとお父さんの看病で……、だから私、割と最近まで、家で一人でいる事が多かったの……。
 だから、結構慣れてるの」

 なのはは寂しそうに過去の事を思い出しながら語る。

「そっか……」
「なのはも大変だったんだね……」

 二人もまた寂しそうに答える。

「そ、そんな事ないよ。私は何もしてなかったし……。
 そういえば私、君もそうだけど、ユーノ君の家族の事とか、あんまり知らないね」
「ああ……僕は元々一人だったから……」
「ん、そうなの?」
「両親はいなかったんだけど、部族の皆が育ててくれたから。だから、スクライアの一族皆が、僕の家族」
「そっか……」

 二人が見つめ合う。

「ユーノ君、色々片付けたら、もっと沢山、色んなお話しようね……」
「うん、色々片付いたらね……」

 これはもう良い雰囲気としか言えないのだろうが、完全に存在を忘れられ、そのすぐ横に、
 まるで幽霊の如く座っているにとっては居心地が悪い事この上ないのであった。

『う〜ん……この雰囲気だと僕が入っていける余地がないなぁ……』
『そうだな、気付かれないように離れた方がいいんじゃないのか?』
『僕も聞きたい事あったんだけど……どうしよう』
『ん〜、二人の世界ってまさにこの事ね〜』
『……、なんかキャラが変わってるな……』

 念話でデバイス達に話しかけて寂しさ……というか虚しさを紛らわせるであった。

「えっと、水を差すようで申し訳ないんだけど……」

 クッキーを食べながら、未だに二人の世界を維持し続けているなのはとユーノに話しかけようとする
 しかしその瞬間、艦内にアラートが鳴り響いてそれを遮られた。

『エマージェンシー! 捜査区域の海上にて、大型の魔力反応を感知!』


"アースラ"艦内管制室 同日 時刻6:50


「な、何てことしてるのあの子達!」

 エイミィが立ち上がって驚きを隠せずに声を上げる。
 管制室内のモニターは全て真っ赤に染まり、Emergencyの文字が映し出されていた。



海鳴市近海 同日 同時刻


 海上には巨大な金色の魔法陣が浮かび上がっており、その中央で儀式魔法を発動させる為の詠唱をするフェイト。

「アルカス・クルタス・エイギアス……、煌めきたる天神よ、今導きのもと、降りきたれ。バルエル・ザルエル・ブラウゼル……」

 魔法陣から雷が発生し、周囲に雨を降らせる。

(ジュエルシードは、多分海の中……。だから、海に電気の魔力流を叩き込んで、強制発動させて位置を特定する。
 そのプランは間違ってないけど……でも……フェイト……!)

「撃つは雷、響くは轟雷、アルカス・クルタス・エイギアス……」

 魔法陣の上空に複数の球体が発生する。
 その球体には目の様なものが浮かび上がり、それぞれが雷を放って結びつく。

「はあああああ!!」

 フェイトがバルディッシュを振り下ろし、それに呼応するように球体から雷が放たれる。
 無理矢理魔力を叩き込まれた海は荒れ狂い、その魔力に反応して残りのジュエルシード6つが発動する。

「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……、見つけた……、残り6つ……」

(こんだけの魔力を撃ち込んで……さらに全てを封印して……。こんなの、フェイトの魔力でも、絶対に限界を超えた!)

「アルフ! 空間結界とサポートをお願い!」
「ああ! 任せといて!」

(だから……誰が来ようが、何が起きようが……あたしが絶対守ってやる!)

 暴走したジュエルシード6つが荒れ狂い、海水を竜巻の如く巻き上げる。

「いくよ、バルディッシュ……頑張ろう」

 フェイトが相棒に話しかける。
 それを無言で受け止める閃光の戦斧。

 そして、少女は無謀としかいえない戦いへ飛び込んでいった。




あとがきらしきもの

な「えっと、管理人は前回の時にフェイトちゃんの魔法をモロに喰らって瀕死の状態なので私が替わって・・・」
優「ちょっとまったあああああああああ」
な「うひっ?! び、びっくりしたぁ……」
優「あれぐらいでやられる僕じゃないよ!」
ク「そうか、じゃあもっとボロボロにしても大丈夫なんだな」
優「そういう意味じゃなあああい!!」
ク「まあ遠慮するな、それはもう跡形も無く消し去ってやる」
優「……まじで殺されそう……」
な「え、えーっと……後編もお楽しみにね!」
ユ「……これってあとがきなの?」
らしきものだからいいのです(ぉぃ


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