"アースラ"艦橋 同日 同時刻 「なんとも呆れた無茶をする子だわ!」 リンディはモニターに映る映像を見て驚きを隠さずに声を上げる。 「無謀ですね……間違いなく自滅します。あれは……個人が出せる魔力の限界を超えている」 クロノも驚きを隠せずに声を上げる。 「確かに……こんなの、絶対に無理だ……」 なのはより一足早く艦橋に着いていたも同意する。 「フェイトちゃん!!」 艦橋に飛び込んで大声を上げるなのは。 「あの! 私急いで現場に!」 モニターに映し出されているフェイトを見て、なのはは艦長席への階段を駆け上がりながら訴える。 「その必要は無いよ。放っておけばあの子は自滅する」 「……!」 「仮に自滅しなかったとしても、力を使い果たしたところで、叩けば良い」 クロノは冷たく言い放つ。 「でも……!」 「今の内に、捕獲の準備を!」 「了解」 なのはの抗議の声も虚しく、クロノは耳も貸さない。 「……」 モニターは苦戦を強いられ続けるフェイトとアルフを映し続ける。 「私達は、常に最善の選択をしないといけないわ。残酷に見えるかもしれないけど、これが現実……」 「でも……」 リンディは黙り込んでしまい、なのはは力無く俯く。 『行って』 その時、突如念話が響いてなのはは驚く。 『なのは、行って!』 なのはが振り返ると、そこには念話を繋げた本人、ユーノがいた。 『僕がゲートを開くから、行ってあの子を』 『でもユーノ君……、私があの子と、フェイトちゃんと話をしたいのは……ユーノ君とは……』 『関係無いかもしれない。だけど僕は、なのはが困ってるなら、力になりたい。なのはが僕に、そうしてくれたみたいに・・・』 そう言って、ユーノは優しく微笑む。 そして、転送装置が光を放つ。 「君は!」 「!?」 クロノがそれに気付いて大声をあげ、は驚愕の表情でそれを見る。 「ぁっ?!」 リンディがそれに気付いて驚く。 ユーノが無言で両手を広げてリンディ達が止めようとするのを拒絶する。 「ごめんなさい! 高町なのは、指示を無視して勝手な行動取ります!」 「あの子の結界内へ、転送!」 ユーノが印を結び、なのはを転送させる。 さらにユーノ自身も転移魔法を使って結界内へ飛んでいく。 「っ! 艦長!」 が指示を仰ぐ。 「仕方ないわ、嘱託魔導師、二人をお願い」 「了解!」 はその身体能力で一階からリンディのいる二階まで一気に跳躍し、トランスポーターを使って転移する。 海鳴市近海 同日 時刻6:56 ユーノによって転送されたなのはが上空から高速で降下していく。 「いくよ、レイジングハート。風は空に、星は天に、輝く光はこの腕に! 不屈の心はこの胸に! レイジングハート、セーットアーップ!!」 《Stand by ready》 空の一部が輝き、そこからバリアジャケットを身に纏い、レイジングハートを手にしたなのはがゆっくり降りてくる。 「フェイトの……邪魔を……するなあああああ!!」 アルフがそれに気付いて攻撃を仕掛ける。 しかし、それはユーノのシールドによって防がれる。 「違う! 僕達は君達と戦いに来たんじゃない!」 「ユーノ君!」 「っ……!」 『馬鹿な! 何やってんだ君達は!!』 クロノがアースラから通信を飛ばす。 『ごめんなさい、命令無視は後でちゃんと謝ります。けど、放っとけないないの!』 なのはが念話で返し、その言葉にクロノは驚く。 『あの子きっと、一人ぼっちなの……。一人きりが寂しいのは、私少しだけどわかるから!』 「まずはジュエルシードを停止させないと、まずい事になる!」 「……!」 「だから今は、封印のサポートを!」 印を結び、魔法陣から魔力で構成された鎖で荒れ狂うジュエルシードを縛り付けるユーノ。 「……」 それを見て心が揺れ動き、その場に立ち尽くすアルフ。 「フェイトちゃん! 手伝って、ジュエルシードを止めよう!」 レイジングハートが独特の機械音を鳴らし、本体から光が溢れる。 その光はバルディッシュの本体へと流れ込み、バルディッシュが光り輝く。 《Power charge……?》(魔力受領を確認……?) 《Supply complete!》(供給完了!) 「……」 「二人できっちり半分こ!」 「やれやれ、なのはもユーノも物好きだね」 その時、突如二人の前にが姿を現した。 「君!」 それを見て驚くなのは。 「そんなに驚かなくても、僕の任務は二人の護衛兼遊撃だからね」 そう言って微笑みながら話す。 「フェイトちゃん……だったかな」 「……」 がフェイトに話しかけ、フェイトは少し身構える。 「話は必ず聞かせて貰うけど、今はあれをなんとかしないといけない。 僕は封印魔法を使えないから、なのはと協力してあげてね。時間稼ぎはきっちりするから」 「……」 「いくよ、、!」 《ええ》 《ああ》 「くっ……うあぁっ!!」 ジュエルシードが鎖から逃れようと激しく抵抗する。 それを必死に抑えようとするユーノだが、危ないところでアルフも加勢する。 「ユーノ君とアルフさん、それに君が止めてくれてる、だから、今の内! 二人でせーので、一気に封印!!」 《Shooting mode》 「ふっ! くっ!!」 襲い掛かってくるジュエルシードを避けながら、距離を詰めるなのは。 (一人ぼっちで寂しい時に、一番して欲しかった事は……、「大丈夫?」って聞いて貰う事でも、優しくして貰う事でも無くて……) 魔法陣で足場を作り、フェイトの方を見るなのは。 《Sealing form, setup》(状況……封印、準備完了しました) バルディッシュが自分の意思で変形する。 「バルディッシュ……?」 フェイトが相棒の行動に驚く。 そしてなのはの方を見ると、なのははウィンクをして答えた。 「ディバインバスター、フルパワー……いけるね?」 《All right, My Master?》(いけないわけがありますか、マスター?) レイジングハートから三枚の桜色の羽状の光が形成され、巨大な魔法陣が浮かび上がる。 バルディッシュからも四枚の金色の羽状の光が形成され、魔法陣から雷が発生する。 「二人とも、いい子を持ってるね」 《そうね、あれだけ高性能なデバイスはそうはないわ》 《……俺達はどうなるんだ?》 《さぁ?》 「お喋りは終わりだよ、これだけの範囲で押さえ込むとなると……」 《……やるしかないか?》 「、限界時間は?」 《ギリギリで22秒》 「充分だ!」 の足元になのはとフェイトのそれを上回る大きさの魔法陣が浮かび上がる。 彼の周囲に莫大な量の魔力が放出され、眩い光に包み込まれていく。 二年前に結界が一つ消えかけ、その事実を知ってから一日も欠かさずに結界解除を自由に出来る様鍛錬を積んできたが、 それは容易な事ではなく、二年かけてようやく22秒持つ様になっていたのだった。 実戦で、しかも自分の意思で使用するのは初めてだが。 「「「「「「 ! 」」」」」」 その場にいる四人と、アースラから戦況を見守るリンディ達もそれを見て驚く。 『待て! それは……!』 クロノが大声で叫ぶ。 『そんなに心配しなくてもいい』 青年の姿に戻ったが静かに応答する。 魔法陣との本体が蒼に染まり、に冷気が纏う。 「我があまねくは冥界への扉……全てを凍てつかす氷結地獄……その身に刻め、涙も凍てる死者の息吹を……!」 《Cocytus Blizzard》 から絶対零度の魔力波が放たれ、竜巻の如く渦巻くジュエルシードはおろか辺り一面の海面すら凍てつかせる。 それを見た全ての者は驚愕するが、なのはとフェイトは封印の為に最大出力で魔法を放つ。 「せーのっ!!」 「サンダー……!」 「ディバイィン……!」 「レイジーーーーーーー!!」 「バスターーーーーーー!!」 両者の魔力の塊が激突し、共鳴し合って強烈な衝撃波と爆音を放つ。 その破壊力は凍てついた海を吹き飛ばし、離島の岩すら粉々にしてしまった。 "アースラ"艦橋 同日 同時刻 『ジュエルシード、6個全ての封印を確認しました!』 管制室のエイミィからの報告が入る。 「な……なんてでたらめな……」 「……でも凄いわ……」 クロノとリンディはもう驚くより他になかった。 海鳴市近海 同日 同時刻 衝撃波で吹き飛ばされた海水が雨の様に降り注いでいる。 「はぁ……はぁ……やっぱり……疲れるな……」 少年の姿に戻り、なんとか飛行しているが呟き、向かい合っているなのはとフェイトを見る。 呆然とするなのはとフェイトの前に、封印された6つのジュエルシードが海から上がってくる。 それは、とても美しい輝きを放ちながら、二人の視線の間に静止した。 (同じ気持ちを分け合える事・・・寂しい気持ちも、悲しい気持ちも半分こに出来る事……。 ……ああ、そうだ。やっとわかった。私、この子と分け合いたいんだ) なのはは右手を胸に当て、真剣な眼差しでフェイトの目を見る。 「友達に……なりたいんだ……」 「……!」 アルフ、ユーノ、がそれを見守る。 "アースラ"艦橋 同日 時刻7:05 艦内にアラートが鳴り響く。 『次元干渉!? 別次元から、本艦及び戦闘空域に向けて、魔力攻撃来ます! あっ! 後6秒!!』 管制室のエイミィから緊急事態の知らせが入る。 「なっ?!」 魔力攻撃がアースラに直撃し、強烈な衝撃とダメージを与える。 「「「 うわあああああああああ 」」」 アースラに搭乗している全員が悲鳴をあげる。 海鳴市近海 同日 同時刻 突如空が怪しく光り、紫の魔力電撃が海面に直撃して海水を弾き飛ばす。 「っ……! 母さん……?」 フェイトが驚いて声を上げる。 「くっ……うあああああああああああ」 魔力電撃がフェイトを直撃し、その激痛に悲鳴をあげる。 「フェイトちゃん! きゃっ!」 なのはのすぐ近くにも魔力電撃が放たれ、その衝撃で吹き飛ばされる。 「くそっ! なんなんだ一体!」 が疲れた体に喝を入れて魔力電撃を避ける。 人間の姿になったアルフがフェイトを受け止め、6つのジュエルシードに手を伸ばす。 しかし、それは転移して来たクロノに遮られる。 「邪魔ぁ……するなあああぁぁぁぁ!!」 「うあぁっ!」 アルフが怒りで豪語しクロノを吹き飛ばす。 吹き飛ばされたクロノは水面に叩きつけられる。 「! 3つしかない……!」 「っ……!」 クロノはギリギリで3つのジュエルシードを手にしており、それをS2Uに取り込ませる。 「ぁっ……うううぅぅぅぅぅ! うあああああああああああああ!!」 それを見て怒りが最高潮に達したアルフは、絶叫して渾身の魔力弾を海に叩きつける。 「あっ……くぅっ……!」 水しぶきがなのは達を襲い、その影響で視界を奪われた。 "アースラ"艦橋 同日 時刻7:06 ようやく魔力攻撃が収まる。 「逃走するわ! 捕捉を!」 リンディが衝撃に耐えながら指示を与える。 「だめです! 追跡機器が機能停止!」 「機能回復まで、後25秒! 追いきれません!」 「……っ、機能回復まで、対魔力防御、次弾に備えて」 「「 はい! 」」 「……それから、なのはさんとユーノ君、クロノと君を回収します」 海鳴市近海 同日 同時刻 雨が降り続ける。 先程までの激闘から打って変わって雨以外の音が全くしない。 四人は茫然と……しかし厳しい表情でその場に立ち尽くしていた。 あとがきらしきもの 優「さてさて、第九話後編も終了しました」 な「いよいよ物語りも大詰めになりました〜」 優「しかし、アースラが魔力攻撃を受けた時、ランディかアレックスが 〜〜〜の機能停止って言ってたんですけど、何言ってるのかわからなかったので追跡機器としておきました……」 ユ「誰か知ってる方がいれば是非教えて下さい」 ク「・……なんか初めてあとがきらしいあとがきになったな」 エ「だね……明日は嵐かな……」 優「ひどくない?」 BACK NEXT 『深淵の種 T』へ戻る |