"アースラ"艦橋 同日 時刻6:47


 「次元震発生! 震度……徐々に増加しています!」
 「この速度で震度が増加していくと、次元断層の発生予測値まで、後30分足らずです!」
 『あの庭園の駆動炉も、ジュエルシードの同系も、ロストロギアです。 それを暴走確度で発動させて、足りない出力を補っているんです』

 アースラ艦内にアラートが鳴り続ける中、アレックス、ランディ、エイミィが情報と状況を伝えていく。

 「……始めから……片道の予定なのね……」

 それを聞いて呟くリンディ。
 もう一刻の猶予も無くなってしまった。


 アルフが人格崩壊を起こしてしまったフェイトを抱きかかえて医務室へ向けて走り、なのはとユーノもそれについて行く。

 「クロノ君! どこへ?」

 その道中でクロノに会い、なのはが尋ねる。

 「現地へ向かう。 元凶を叩かないと……」

 クロノがそれに答える。

 「私も行く!」
 「僕も!」
 「僕も行く」

 なのはとユーノが答えた後、いつの間にかクロノの後ろにいたが言う。

 「? だめだ、まださっきの負担だって……」
 「大丈夫。 あれくらいでどうにかなる程、僕は軟じゃないよ」

 そう言い切って、真剣な眼差しでクロノを見据える

 「……わかった。 但し……無茶は厳禁だ」

 それを少しの間受け止めていたクロノだったが、溜め息を吐いて答える。

 「わかってる」
 「アルフは、フェイトについててあげて」
 「う、うん!」
 「行こう!」
 「「 うん! 」」

 クロノの合図とともになのはとユーノが答え、は無言で転送ポートに向けて駆け出す。

 『クロノ、なのはさん、ユーノ君、君、私も現地に出ます。 あなた達は、プレシア・テスタロッサの逮捕を!』
 『『『『 了解! 』』』』

 リンディから念話で指示が入り、それに四人が答える。


 時の庭園入り口 同日 時刻6:52


 薄暗い闇の中、雷に照らされた空間で、四人の魔導師が戦闘態勢をとる。

 周囲には無数の傀儡兵達が蠢いており、小さな対象を静かに見据える。

 「……いっぱいいるね」
 「まだ入り口だ。 中にはもっといるよ」
 「君、この子達って……?」
 「近付いてくる敵を攻撃するだけの、ただの機械だよ」
 「そっか……なら安心だ」

 なのはが魔法を殺傷設定に切り替える。
 なのはが攻撃を始めようとした時、クロノがそれを手で制する。

 「この程度の相手に、無駄弾は必要ないよ」
 「ここは僕とクロノで一気にやる」
 「え?」
 「はぁぁ!」
 《Stinger Snipe》
 「……!」

 なのはが聞き返す間も無く、クロノがS2Uに魔力を込め、が傀儡兵の真っ只中に突っ込んで行く。

 それを確認した傀儡兵達が一斉に襲い掛かる。

 「はぁっ!!」

 クロノがS2Uから魔力刃を放ってまず三機を破壊し、さらに上空で回転させてそこから一気に他の傀儡兵も撃破していく。

 「はああああああ!!」
 《Stream Blade》

 は傀儡兵達に攻撃する暇すら与えず、高速で斬撃を繰り出し、次々と撃破していく。

 「は、速い!」

 それを見たなのはが驚きを隠せずに声を上げる。

 「スナイプショット!」

 クロノが残りの傀儡兵を破壊する。

 「これで!」

 が最後に残った大きめの傀儡兵に攻撃を仕掛ける。
 傀儡兵は巨大な斧を振り下ろすが、はそれを軽々と避けて傀儡兵の頭部に取り付く。

 《Fiercely Penetrate》

 が頭部を貫通し、機能を停止させられた傀儡兵が轟音を立てて倒れる。

 「「 …… 」」

 なのはとユーノは、茫然とその光景を見ているしかなかった。

 「ぼーっとしてないで、行くよ!」
 「「 ……うん! 」」

 クロノの呼び掛けで現実に引き戻された2人が返事をし、それについて行く。


 「その穴、黒い空間がある場所は気を付けて」
 「え?」
 「虚数空間、あらゆる魔法が、一切発動しなくなる空間なんだ」

 クロノとユーノが説明していく中、上空から翼を持った傀儡兵が襲い掛かる。

 「ちっ!」

 それを見たが一気に傀儡兵のいる高さまで跳躍してで斬り裂いて破壊し、
 それらが黒い空間に飲み込まれていく。

 「飛行魔法もデリートされる! 今みたいに落ちたら、重力の底まで落下する……二度と上がって来れないよ!」
 「き、気をつける……!」

 クロノが扉を蹴飛ばして強引に開く。
 そこには入り口より多くの傀儡兵が待ち構えていた。

 「ここから二手に分かれる! 君達は最上階にある駆動炉の封印を!」
 「クロノ君は?」
 「プレシアの元へ行く。 それが僕の仕事だからね。 今道を作るから、そしたら!」
 「……格好つけてるんじゃないよね?」

 が冗談混じりにクロノに問いかける。

 「の任務は二人の護衛だろ? 僕は大丈夫だ」
 「……わかった。 クロノこそ、無茶してくたばるんじゃないよ!」
 「それはこっちのセリフだ!」
 《Blaze Cannon》

 S2Uから熱量を伴う破壊魔法を放って道を作る。

 「クロノ君! 気を付けてね!」

 なのはがユーノと一緒に階段の方へ飛んで行き、もそれに続く。


 「クロノ君、一人で大丈夫かな……?」

 なのはが心配そうに言う。

 「大丈夫だよ。 クロノはほんとに強いからね」

 がそれに答える。
 何度も彼と模擬戦をして、共に戦ってきただから言えるのだろう。

 「ここにもいる……!」

 ユーノが警告する。

 「お喋りは終わりだ、一気に駆動炉まで行くよ!」
 「「 うん! 」」

 が突っ込み、なのはが後方から支援、ユーノが二人の補助、という形で次々と立ち塞がる傀儡兵達を倒していく。

 《!》
 《後ろだ!》

 が危険を察知して警告する。
 あまりに多くの傀儡兵を相手にしていた為、後ろを取られていた。

 「くっ……!」

 が反転して防御姿勢をとる。

 しかし、後ろを取った傀儡兵は突如上空から放たれた魔力弾によって破壊された。

 「!?」

 それを見ては驚くが、すぐに残りの傀儡兵に攻撃を仕掛ける。

 「アルフ!」
 「手伝いに来たよ、あたしも戦う!」
 「フェイトちゃんは?」
 「フェイトなら大丈夫さ……。 今は……少し休んでるだけだから……」

 なのはの問いかけに、アルフが心配そうな表情で答える。

 「アルフさん……」
 「早速で悪いんだけど……アルフ、ここからどう行けば駆動炉に一番近いかな?」

 この場にいた残りの傀儡兵を倒したがアルフに聞く。

 「ここからなら……螺旋階段を抜けた先にあるエレベーターを使うと一番近いよ」
 「わかった、ならそこへ急ごう!」


 螺旋階段に出た達を待っていたのは、先程より更に多い数の傀儡兵だった。

 「くっ! 数が多い!」
 「だけならいいんだけど……このっ!」
 「ご丁寧に全部が全部Aクラスだからね……!」
 「っ……なんとかしないと! あっ!」

 多数の傀儡兵を同時に捕獲し続けていた為に限界を迎えたバインドが千切れ、傀儡兵が巨大な斧をなのはに向けて振り下ろす。

 「なのは!」
 「!」
 「なのは!!」

 ユーノが叫ぶが既に遅く、傀儡兵の巨大な斧がなのはに襲い掛かる。

 《Thunder Rage》

 なのはは目を瞑って体をすくめるが攻撃が届く事は無く、傀儡兵が上空から突如振ってきた雷に拘束される。

 《Get Set》
 「サンダー……レイジーーーーーー!!」

 強力な雷撃が拘束された傀儡兵の周囲に降り注ぎ、その中にいた傀儡兵達が爆音を立てて砕け散る。

 「フェイト!?」

 突如現れたのがフェイトだった事に驚きを隠せないアルフ。

 その時、両側の壁が破壊され、そこから今までより巨大な傀儡兵が一体ずつ現れる。

 「大型だ……バリアが強い!」
 「うん……それにあの背中の……」

 傀儡兵の背中に装備されている二門の砲塔に魔力が集中していく。

 「……だけど……二人でなら……」
 「……うん! うんうん!」

 それを見て警戒するなのはだが、フェイトのその言葉を聞いて嬉しそうに何度も頷く。

 「それじゃ、もう一体は僕が片付けるよ」

 に魔力を集中させる。

 「君……一人で大丈夫?」
 「心配しなくても平気だよ」
 「……そちらは任せます」

 フェイトが小さく言う。

 「……任せといて!」

 少し意外だった為に一瞬ポカンとなっただったが、すぐに微笑んでそれに答える。

 「いくよ……バルディッシュ!」
 《Get Set》
 「こっちもだよ! レイジングハート!」
 《Stand by,Ready》
 「サンダー……バスターーーーーーー!!」
 「ディバイィン……バスターーーーーーー!!」
 「「 せー……のっ!! 」」

 なのはとフェイトが最大出力で砲撃魔法を放ち、その威力に耐え切れず大型の傀儡兵が庭園の外壁ごと吹き飛ばされる。

 「僕らもやるよ、!」
 《ああ!》
 「薙ぎ払え!!」
 《Blast Fang!》

 から強力な魔力衝撃波が放たれ、傀儡兵の放った砲撃魔法とぶつかり合う。
 しかしその均衡は長くは持たず、の放った衝撃波が傀儡兵をシールドごと叩き壊してこちらも外壁ごと吹き飛ばしてしまった。


 二つの巨大な衝撃が庭園全体を揺れ動かし、大きな震動が起こる。

 「っ……来たのね……、だけどもう間に合わないわ……ね? アリシア……」

 二度と返事ができなくなってしまった最愛の娘に問いかけ続けるプレシア。

 「あぁぁ……アリシア……うっ……ぅ……あぁ……」

 しかし、彼女の体を病が容赦なく蝕み続け、その激痛に耐えかねて膝をつく。


 次元断層発生まで、残り約17分58秒




 あとがきらしきもの

 優「さぁさぁ遂に来ましたよ第一期に於けるラストバトール!」
 ク「……僕は全く出てこないな」
 優「えっと……ま、まぁクロノ君も頑張ってるって事で!」
 ク「……原作もそうだったしな」
 な「ク、クロノ君、元気だそう!」
 ユ「そうだよ、最後に子どもとは思えない発言するじゃないか」
 ク「……それは褒めてるのか?」
 な「なにはともあれ、後編もお楽しみに!」


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