ハラオウン宅 12月8日 時刻9:32 「ん……」 温かな日差しがカーテンの隙間からを照らす。 その眩しさと小鳥のさえずりを耳にして、は目を覚ました。 「……僕の……部屋?」 頭がはっきりせず、いつから自分の部屋にいたのかも良くわからない。 そんな状態で少しの間、ただボーっと天井を見つめていただが、右手に温かい感触がある事に気付く。 「……フェイト?」 体が思うように動かず目線だけをずらすと、そこにはのベットに突っ伏して眠っているフェイトがいた。 じゃあこの温かい感触はなんだろう? はなんとか腕を上げようと、震える手を少しずつ動かす。 「……ん……んぅ」 少し手が動くと、フェイトはそれに気付いたのか身動ぎしてぼんやりと目を開けた。 「おはよう、フェイト」 「…………? おはよう……」 寝惚けているのだろうか、フェイトの目はまだ焦点が定まっていなかった。 その様子には思わず笑みを零した。 と、そんな微笑ましい光景は一瞬で崩れ去る。 「えーっと……フェイト?」 「……」 理由は、多分まだ寝惚けているのだろうフェイトがに寄り添って来て、しかも顔が物凄く近い。 驚いて体を起こそうとしたんだけど……、なんだか妙に全身が痛くて思うように動いてくれない。 そういえば昨日の記憶がどうもさっきからはっきりしない。 なんでフェイトがの部屋にいるのかもわからなかったし、昨日は随分と酷い目に遭った気が……。 はっきりとわかるのは、今この状況は結構やばくて、手にある温かい感触はフェイトがのそれをぎゅっと握り締めている事くらい。 「フェイト、起きて。 フェイトー?」 「……が目の前にいる……」 うん、そりゃほんと目の前に顔があるんだからそうだよね。 ってそんな冷静に考えてる場合じゃなくて……。 そうだ、とに頼めば。 「……あれ?」 いない。 いつも机の上に佇んでいる筈のとの魔力が感じられなかった。 (クロノ……はだめだよね。 またキレたら困るしなぁ……) 以前、風呂場の一幕をクロノに見られた時は酷い目に遭った。 そりゃフェイトは妹になるから大切だろうけど、あれは流石に度が過ぎてるんじゃないかなクロノ。 (エイミィさんとリンディさんは……やめとこ……) あんな拷問をもう一度なんて絶対に嫌です。 (アルフ……そうだ、アルフは?) 一応アルフにも追っ駆け回されたけど、その後フェイトに注意されてたから一番安全そうだ。 魔力を辿ると、アルフは随分近くにいるらしい。 体が動かないのは不便だなぁ……というより、今は動かしたくても動けないんだけど。 フェイトは既に手どころか、の右腕を抱き枕状態にしてしまっていた。 《アルフ、どこにいるの?》 とりあえず念話を送ってみる……が、返事がない。 そういえば、耳を澄ましてみるとなんだか不規則な音が聞こえる。 「ん〜、もう食べられないよ……」 鼾と一緒にそんな寝言が聞こえてきた。 「……素直にフェイト起こすかな」 とりあえず、このままだと色々まずい……様な気がする。 「フェイト、起きて。 朝だよ、フェイトー」 「う〜……」 「フェイト、朝だってば」 「む〜……」 大きな声を出したいけど、どうもお腹に力が入らない。 なんとか左腕は動かせたので、フェイトを軽く揺さぶってみる。 フェイトってこんなに寝起き悪かったっけ? 「……?」 「うん」 「え、えと……」 「出来れば放してくれると助かるんだけど……ちょっと痛くて」 やっと起きてくれたらしいフェイトの顔は、みるみる真っ赤になっていった。 「フェイト、起きて。 朝だよ、フェイトー」 「う〜……(凄く気持ちいいのに……)」 どこからか聞こえてくる聞き慣れた声が、少し煩わしく感じるフェイト。 なんだかよくわからないけど、今のフェイトはとっても心地良く眠っているから、起こして欲しくなかった。 「フェイト、朝だってば」 「む〜……(起きたくない……)」 今度は体を揺らされて、仕方なく重い瞼を開けるフェイト。 と、目を開けた瞬間にの顔がドアップ。 フェイトは一瞬にして固まった。 「……?」 「うん」 「え、えと……(え? え? の顔が近……え、私……)」 起きていきなりな事態に、フェイトの頭はパニック状態に陥ってしまった。 「出来れば放してくれると助かるんだけど……ちょっと痛くて」 そう言われてフェイトは目線を下にずらすと、の腕にがっしりしがみついていた。 「あ、え、ぅ……〜〜〜っ!?」 あまりの恥ずかしさに声にならない奇声を発して高速で離れる。 が、勢いがあり過ぎたのかそのままベットから転げ落ちてしまった。 「きゃっ!?」 「フェ、フェイト? 大丈夫……っておわ?!」 「!」 フェイトがベットから転げ落ちるのを見て、慌てて体を起こそうとした。 しかし、まだ思うように動かないのか、体を起こす途中でバランスを崩しても転げ落ちてしまった。 見事にフェイトの真上に落ちてきたをフェイトが受け止める。 「いっ、〜〜〜っ……ご、ごめんフェイト」 「う、うぅん……大丈夫?」 「だ、大丈夫。 ほんとごめん、すぐに退くから……フェイト?」 私、何してるの? フェイトは自分に問い掛けていた。 を受け止めて、そのまま抱き合う形となっている。 顔から火が出そうなくらい恥ずかしいのに、腕が言う事を聞いてくれない。 「フェイト……? その、腕ほどいて……」 「……よかった」 「え……?」 「……あのまま……死んじゃう……んじゃないかって……私……怖くて……ずっと……」 「フェイト……」 フェイトが泣いて僕にしがみついている。 ベットから落ちた時に全身を駆け抜けた痛みなど忘れて、はフェイトを見つめていた。 そうだ……、昨日は仮面の男と戦って、ボロボロにされて負けたんだった。 ようやくはっきりしだした頭が、先日の戦闘の事を鮮明に告げ始めた。 自分の腕や寝間着の隙間から見える上半身には、かなりの量の包帯が巻かれていた。 (心配、かけちゃったんだ……) はまだ泣き続けているフェイトを見て、申し訳ない気持ちで一杯になった。 それと同時に、自分の不甲斐無さに腹が立った。 相手に一撃すら入れられずに完敗して、フェイトを泣かせてしまった事に。 「ごめん……フェイト」 「っ……もう……無理しちゃ……だめだよ……?」 「……うん」 声をつまらせながらも、真っ直ぐにの眼をその真紅の瞳で捉え、フェイトが囁くように言った。 それに対して、は曖昧な返事しかできなかったが。 あれだけの強敵が現れたとなると、無理にでも結界解除をしなければならない時が、恐らく来るだろうから。 「……ほんとに……わかってる?」 「う、うん。 わかってるよ」 「……嘘、わかってない」 「うっ……」 「ほんとに……心配したんだから」 「それは、その……ごめん。 でも……フェイトも無理はしないで、心配なのは一緒だから」 「……ずるい」 「へ?」 先程まで泣いていたフェイトが、今度は少し頬を膨らまして怒る……というか拗ねている。 その理由がわからなくて、は随分と間の抜けた返事をしてしまった。 「私がに言ってるのに……」 「そっか……。 なら、おあいこだね」 「……そうなのかな?」 「そうだよ」 そう言って顔を見合せ、自然と二人はくすくす笑っていた。 「もしも〜し、そろそろいいですか〜?」 「「 ?! 」」 その時、急にドアからニヤニヤしているエイミィがにゅっと顔を出して来て、とフェイトは石化した。 開かれたドアの向こうには、満面の笑みを浮かべているリンディと、顔を赤くしたなのはとユーノ。 そして床にはなぜかバリアジャケットを身に纏い、S2Uを握ったまま気絶して倒れているクロノがいた。 「あ、あの、これは……そ、そのっ!」 「いや〜、良いモノ見せて貰ったよ! お二人さん!」 「エ、エイミィさん! これは事故で……」 「あらあら君。 そんなに恥ずかしがらなくてもいいわよ〜」 「リ、リンディさん!?」 「フェイトちゃんと君……その……仲良いんだね」 「う、うん……、そうみたいだね」 「な、なのは!? ユーノ?!」 「ったく朝からうるさいね〜……。 一体何やってんだ……い……」 エイミィとリンディにからかわれて、尚且つなのはとユーノには真っ赤な顔のまま妙な視線を向けられている。 そんな中で誤解を解くのに必死だったは、現在の自身とフェイトの状況をすっかり失念していた事を後悔した、が、後悔先に立たず。 この後、フェイトはに殴り掛かろうとするアルフを懸命に抑え、は四人(殆どエイミィとリンディ)の誤解を解く為に翻弄させられ続けた。 ちなみにクロノは四人がの部屋を覗いていたのを発見し、呆れて注意しようとした時に偶然見たドアの隙間からの光景に絶句。 そして……、いや、これ以上は言うまい。 とにかくハラオウン宅に住む一家は、朝からドタバタでエネルギー溢れる愉快な一家なのだった。 「覗き見なんて、趣味悪いなぁ……」 「そうだよ……なのはとユーノまで……」 「ご、ごめんなさい」 「大きな音がしたから、何かあったのかと思って……」 騒動開始からおよそ一時間。 やっとの事で引き下がってくれたエイミィ・リンディ・アルフ。 が、場所がリビングに移ってからも相変わらずエイミィとリンディはそれはもう楽しそうに話をしており、アルフと復活したクロノはをジト目で見ている。 まだ体が思うように動かないはフェイトに肩を貸して貰って、リビングまでゆっくりと歩いてきていた。 ちなみに正規の訓練を受けた管理局の武装局員でも、先日のと同程度の怪我をした場合、結構な長期入院をするのが普通なのだが。 当のはかなり元気で、今日一日ゆっくりすれば治る、と何ともなかったかのように言うあたりが凄いというかとんでもないというか……。 話は変わってなのはとユーノは、朝の鍛練を終えるとそのままハラオウン宅を訪れていた。 なんでも闇の書の件について話があると先日リンディに言われており、なのははしっかり親から承諾を受けている。 フェイトはずっとに付きっきりだったので、知らなくて当然だった。 ちなみに今日は日本でいう日曜日、休日なので学校はお休み。 「あ、そういえばエイミィさん」 「もう、君もフェイトちゃんも隅に置けませんね〜」 「そうね〜、私としては嬉しいんだけど」 「私もですよ〜♪」 「エイミィさん!! ……〜〜〜っ」 「だめだよ、大声出しちゃ……」 完全に二人の世界に入ってしまっているエイミィにが大声を出す。 が、無理に出したので痛みが走り、が顔を伏せて痛みを堪えるのを見て、フェイトが心配する。 「ん? どしたの……ってやっぱりお熱いね〜お二人さん」 「エイミィさん……本気で怒るよ……?」 「……」 「じょ、冗談だよ君。 やだなぁもう……あはははは……」 またもからかったエイミィだったが、本気でから殺気を感じ、さらにフェイトからは無言で睨まれたので流石に黙る。 それを見て一つ大きな溜息を吐き、が気を取り直して尋ねる。 「えっと……とはどこにいっちゃったんですか?」 「あ、あぁ、二人なら本局に送ってメンテナンス中。 君の怪我も酷かったんだけど、二人はもっと酷かったからね……。 二人は自分で直せるって聞かなかったんだけど、艦長が命令してやっと行ってくれたんだよ」 「そうですか……」 「明け方にマリーさんから連絡が入ったわ。 二人とも明日には完治して戻ってくるそうだから、大丈夫よ」 「マリーさんが見てくれてるんだ」 「そうそう。 だから心配しなくても平気だよ」 リンディに便乗し、エイミィはニカッと笑ってサムズアップした。 「あの、マリーさんって……」 なのはが聞き覚えのある名を耳にして尋ねる。 「あぁ、マリーさんは随分前からアースラスタッフのデバイスマスターをしてくれてるんだ。 レイジングハートとバルディッシュを修復強化してくれたのも彼女だよ。 腕は確かだからね。 僕が保証する」 「そうなんだ」 なのはの問いにクロノが答え、なのはは納得したように二度頷いた。 「そういえば、レイジングハートとバルディッシュの説明をまだしてなかったから、今からしちゃうね」 「あ、はい」 「うん」 「カートリッジシステムは、扱いが難しいの。 本来なら、その子達みたいに、繊細なインテリジェントデバイスに組み込むようなものじゃないんだけどね。 本体破損の危険も大きいし、危ないって言ったんだけど……、その子達がどうしてもって。 よっぽど悔しかったんだね。 自分がご主人様を護ってあげられなかった事とか……。 ご主人様の信頼に答え切れなかった事とか……」 エイミィの説明を聞き、なのはとフェイトはそれぞれの相棒を見つめる。 「ありがとう……レイジングハート」 《All right》 「……バルディッシュ」 《Yes, sir》 なのはとフェイトが感謝の意を表し、レイジングハートとバルディッシュは簡潔に、それでも確固たる決意を以て主に答えた。 そのやり取りが終わったのを確認し、エイミィが説明を続ける。 「モードはそれぞれ三つずつ。 レイジングハートは、中距離射撃のアクセルと、砲撃のバスター。 フルドライブは、エクセリオンモード。 バルディッシュは、汎用のアサルト、鎌のハーケン。 フルドライブは、ザンバーフォーム。 破損の危険があるから、フルドライブはなるべく使わないように。 特に、なのはちゃん?」 「はいっ?」 急に話がなのはに重点を置かれ、なのはは少し驚いて返事をした。 「フレーム強化をするまで、エクセリオンモードは起動させないでね」 「はい……」 それを聞いて、真剣な眼差しでレイジングハートを見つめるなのは。 「カートリッジシステムって、もしかしてかなり危ない?」 話を聞いていたが疑問に思って問い掛ける。 「そうだね〜……。 使用する際にはかなり慎重にやらないと、溜め込まれた魔力が暴発しちゃうから……」 「前にも言ったが、十分危険で物騒な代物だ。 最近は、ミッド式でこのシステムを使っている魔導師はいないと思う」 「ストレージデバイスでも、暴発の可能性は十分にあるわ。 カートリッジは局の方から支給してくれるけど、気をつけてね」 「はい」 「わかりました」 の問いにエイミィ・クロノ・リンディが答え、リンディに念を押されたなのはとフェイトが真剣な表情で頷く。 「フェイト、気をつけてね」 「うん……。 大丈夫だよ」 「なのはも無茶したらだめだよ?」 「ありがとう、ユーノ君」 「なのはちゃんとユーノ君まで……。 二人に比べてうちのパートナーときたら……」 「……なんなんだ、エイミィ」 「若いっていいわね〜」 「リンディも十分若いじゃないか」 「あら、ありがとうアルフさん」 いつもの雰囲気でほのぼのと言うリンディだったが、多少仕事の顔に戻して話を切り出す。 「問題は、彼らの目的よね……」 「えぇ……。 どうも腑に落ちません。 彼らはまるで、自分の意志で闇の書の完成を目指しているようにも、感じますし……」 「ん? それってなんかおかしいの?」 クロノの言葉に疑問を感じたアルフが聞き返し、クロノとリンディがアルフを見る。 「闇の書ってのも、要はジュエルシードみたくすっごい力が欲しい人が集めるもんなんでしょ? だったら、その力が欲しい人の為にあの子達が頑張るってのも、おかしくないと思うんだけど」 それを聞き、クロノとリンディは少し顔を見合せて、その問いに答える。 「第一に、闇の書の力はジュエルシードみたいに自由な制御の利くものじゃないんだ」 「完成前も完成後も、純粋な破壊にしか使えない。 少なくとも、それ以外に使われたという記録は一度も無いわ」 「あぁ、そっかぁ……」 「それからもう一つ、あの騎士達……。 闇の書の守護者達の性質だ。 彼らは人間でも使い魔でもない」 クロノの言葉に、なのは達が驚く。 「闇の書に合わせて、魔法技術で造られた疑似人格。 主の命令を受けて行動する、唯それだけの為のプログラムに過ぎない筈なんだ」 短くではあるが、沈黙がリビングを支配する。 その沈黙を破ったのはフェイトだった。 「あの……、使い魔でも人間でもない擬似生命っていうと、私みたいな……」 「っ!」 「違うっ!」 リンディがフェイトの言葉に対して敏感に反応し、それを否定しようとする。 が、それよりも早くが声を荒げて叫んでいた。 その事に、その場にいる全員が驚いてを見る。 「そんなの違う! フェイトは普通の人間だ! どこもおかしくなんかない!!」 全身に走っているであろう痛みの事など気にも止めずに、怒鳴る。 言い終わり、息を荒げるは俯いて、拳を力の限り握り締めている。 そのあまりの剣幕にリンディすら圧倒されて、少しの間押し黙った。 「……フェイトさん、あなたは生まれ方が少し違っていただけで、ちゃんと命を受けて、生み出された人間でしょう?」 「検査の結果でも、ちゃんとそう出てただろ。 ……変な事言うものじゃない」 「……はい……ごめんなさい……。 も……ごめんね……」 「……僕も……怒鳴ったりしてごめん……」 リビングの空気が一気に重くなる。 「あぁ! モニターで説明しよっかー!?」 それを振り払ったのは、他でもないエイミィだった。 機器を操作して、リビング内にモニターを起動させる。 「守護者達は、闇の書に内蔵されたプログラムが、人の形を取った者。 闇の書は、転生と再生を繰り返すけど、この四人はずっと、闇の書と共に様々な主の下を渡り歩いている」 「意思疎通の為の対話能力は、過去の事件でも確認されてるんだけどね〜。 感情を見せたって例は、今までに無いの」 「闇の書の蒐集と主の護衛……。 彼らの役目はそれだけですものね」 「でも、あの帽子の子、ヴィータちゃんは、怒ったり悲しんだりしてたし……」 「シグナムからも、はっきり人格を感じました……。 成すべき事があるって……。 仲間と、主の為だって」 「主の為……か……」 クロノが暗い声で呟いたのに対し、その理由を知るリンディ・エイミィ・は複雑な表情でクロノを見、 なのは・フェイト・ユーノ・アルフは僅かに疑問の視線を投げ掛けた。 また少し重くなった空気を払うように、それまで俯いていたが口を開く。 「……ま、それは捜査してくれてる局員に任せるしかないかな」 「転移頻度から見ても、主がこの付近にいるのは確実だからね……。 案外、主の方が先に捕まるかもしれない」 「あぁ〜! そりゃ分り易くて良いね〜!」 「だね。 闇の書の完成前なら、持ち主も普通の魔導師だろうし」 「うん。 それにしても、闇の書について、もう少し詳しいデータが欲しいな……」 少し考えてから、クロノは何かを思いついたらしく少し微笑んで、ユーノに歩み寄る。 「ユーノ、早速で悪いんだが、今日から少し頼みたい事がある」 「ん? いいけど……」 クロノからお願いなんて珍しい、なんて思いつつも突然の事に少し驚きつつ、ユーノは了承した。 話が終わり、リンディに休むよう言われたに手を借して、フェイトはの自室まで付き添ってベットに寝かせた。 そうしてからほんの数分くらいだろうけど、それでもとても長く感じる沈黙が続いた。 「ごめんね、フェイト……」 「え?」 急に謝ったにフェイトは少し驚き、俯いていた顔を上げる。 「……が謝る事ないよ。 私の方こそ……ごめんなさい」 しかし、すぐにの言いたい事を理解して、フェイトは伏し目がちに謝った。 さっきフェイトに怒鳴った事に対して、は謝っている。 でもそれは、フェイトがあんな事を言ってしまったからに違いないから。 「謝ってからでなんだけど……、もうあんな事は言わないで」 「……うん、ほんとにごめんね……」 また謝って、朝と同じく涙が溢れて来た。 「フェイト……泣いてるの?」 「泣いて……ないよ……」 必死に涙が零れないよう堪えるが、堰を切ったようにフェイトの膝の上に添えてある手に落ちていく。 泣いてるところなんてに見られたくないのに……。 フェイトの意思に反して、涙は次から次へと溢れ出てきた。 (また……泣かせちゃったな……) は自己嫌悪しつつも、涙を流すフェイトが少し、ほんの少しだけ、羨ましく見えた。 こんな事を考えるのは不謹慎なんだろうけど、には涙を流して泣くという事ができないから。 「フェイトは……涙を流せるんだから、人間以外の何者でもないよ」 「そう……なのかな……?」 「うん、絶対。 僕が保証するから」 「あり……がと…………」 随分と動くようになった体を起して、はフェイトの涙をそっと拭った。 あとがきらしきもの 優「むぅ……また少し更新が遅く……」 ク「……なんかもう怒る気もなくなってきた」 ユ「確かに……」 優「うぐぅ……ほんと申し訳ない……」 「で、今回は僕とフェイトの話がメインだったね」 フェ「……」←俯いて顔真っ赤 優「なんていうか、最近×フェイト分が足りなかったからね!」 ア「なんだいそりゃ……」 な「でも、二人とも仲良いよね」 ユ「うんうん」 フェ「うぅっ……。 なのはとユーノだって、最近凄く仲良いよ?」 「それは僕も思ってた」 な&ユ「「 そ、そんな事ないよ?! 」」 エ「二人とも、息ピッタリで否定しても全然説得力ないよ〜?」←すんごいニヤニヤしてる な「あぅっ……」 ユ「う……」 優「……惚気全開ですか」 リ「若いっていいわね〜」 終われ 追記 すいません、この話で今日は休日って書いてたんですが、 第五話後編の最後で、アルフが「明日は学校」って言ってたの忘れてました……_○__ とりあえず、アルフのセリフを修正しておきました。 むぅ……、気を付けないと_○__ すんごい凡ミスしてすいませんでした(*- -)(*_ _) BACK NEXT 『深淵の種 U』へ戻る |