"アースラ"艦内管制室 同日 時刻19:54


 管制室及び艦橋のモニターは、結界に阻まれて映像を映し出す事が出来ずに雑音を流し続ける。

 「アレックス! 結界のキー、まだできない?」
 『解析完了まで、あと少し!』

 エイミィ、アレックス、ランディ達が結界を解く鍵を探している最中であった。

 「術式が違う……ミッドチルダ式の結界じゃないな」

 管制室のモニターの一つに広域結界の術式が映し出され、それを見てクロノが呟く。

 「そうなんだよ……どこの魔法だろ、これ……」

 クロノの言った通り、海鳴市市街地に展開されている結界はミッド式のものではなく、その為解析に時間がかかっていた。


 海鳴市市街地結界内 同日 同時刻


 ビルが立ち並ぶオフィス街の上空で、フェイトとなのはを襲撃した魔導師が激闘を繰り広げる。

 「くっ……」
 「こんのぉ! うっ!」

 フェイトが少し押されて僅かに距離をとり、赤いバリアジャケットを身に纏ったまだ幼い少女が追撃を仕掛けようとするが、
 低空に回り込んでいたアルフに両手首と両足首をバインドで縛りつけられ張りつけの状態にされる。

 「くっ! ぐぐっ! ぐうぅ!!」

 少女は必死でそれを解こうともがくが、そんなに簡単に壊れる程アルフのバインドは易いものではなく、無駄な抵抗と言って差し支えなかった。

 「終わりだね。 名前と出身世界、目的を教えて貰うよ」
 「くっ……くううううう!!」

 フェイトがバルディッシュを少女に向けて警告し、少女は怒りをあらわにして二人を睨みつける。

 「……っ! なんかやばいよ! フェイト!」
 「うああ!?」

 アルフが危険を察知してフェイトに伝えるが、それと同時に一人の女性がフェイトを吹き飛ばす。

 「シグナム?」
 「うおおおおおおおお!!」
 「なっ!?」
 「っ! ふっ!!」
 「うわぁ!!」

 さらにアルフと同じような耳と尻尾を生やした男が不意を突いて連続で蹴りを叩き込み、アルフを吹き飛ばす。

 「レヴァンティン、カートリッジロード」
 《Explosion!》

 シグナムと呼ばれた女性が足元に薄い紫色の三角の魔法陣を展開し、自らの剣に弾丸を装填させる。
 そしてレヴァンティンと呼ばれた彼女のデバイスが強力な魔力と共に炎を纏う。

 「紫電一閃! はぁっ!!」
 「!?」

 シグナムがフェイトに突撃し、フェイトはあまりの早さに対応しきれずバルディッシュの柄で受け止めるがそれを真っ二つにされてしまう。

 「だああっ!」
 「っ!」
 《Defensor》

 さらに斬撃を繰り出すシグナム。
 それから主を守る為にバルディッシュが自動防御を発動させるがその威力に耐え切れず、フェイトは下にあったビルに叩きつけられた。

 「フェイトーーー!!」

 それを見てアルフが助けに行こうとするが、先程の男が立ち塞がる。

 「こんのぉ……!」


 「フェイトちゃん……アルフさん……」

 なのはが、吹き飛ばされたフェイト、そして激闘を繰り広げるアルフを見て思わず声を上げる。

 「まずい……助けなきゃ!」

 ユーノがそれを見て両手で印を結ぶ。

 「妙なる響き……光となれ……」

 なのはの足元に淡い緑色をした魔法陣が浮かび上がる。

 「癒しの円のその内に……鋼の守りを与えたまえ……」

 ユーノの詠唱が終わると同時に、なのはを魔力で構成された半円の膜が覆い、その中を小さく輝く光が溢れる。

 「回復と、防御の結界魔法。 なのはは、絶対ここから出ないでね」
 「うん」

 なのはがそれに驚いていると、ユーノがなのはに忠告し、なのはがそれに答えたのを確認して、ユーノはフェイトの元へ飛んで行った。


 「どうしたヴィータ、油断でもしたか?」

 シグナムがバインドで張りつけにされている、ヴィータと呼んだ少女に話しかける。

 「うるせぇよ! こっから逆転するとこだったんだ!!」

 ヴィータと呼ばれた少女は外見に違わず子どもっぽく言い返す。

 「そうか、それは邪魔したな。 すまなかった」

 そう言うと、シグナムは左手に魔力を集中し、ヴィータを縛るバインドを壊す。

 「だがあんまり、無茶はするな。 お前が怪我でもしたら、我らが主は心配する」
 「わぁーってるよ! もぉ……」
 「それから、落し物だ。 破損は直しておいたぞ」
 「……ありがと、シグナム」

 シグナムが拾って直しておいた帽子をヴィータの頭に乗せてやと、ヴィータは随分素直に礼を言った。
 そして低空でぶつかり合うアルフとザフィーラを見る。

 「状況は、実質三対三。 一対一なら、我らベルカの騎士に……」
 「負けはねぇ!」

 二人がフェイトのいるビルへ向かって飛ぶ。

 「……あれ? 闇の書が……ない!」

 戦闘中に落としてしまったのか、冗談にならない事態にヴィータは焦る。

 「心配するな、闇の書はシャマルが持っている」
 「……それじゃ、遠慮なくぶっ飛ばして魔力を奪ってやる!」

 ヴィータはそれを聞いて安堵の溜息を漏らす。
 そして、意気込んで更に速度を上げて飛翔する。


 「大丈夫?」
 「うん……ありがとう、ユーノ……」

 駆けつけて来たユーノにフェイトが答える。

 「バルディッシュも……」

 ユーノが無残な姿になってしまったバルディッシュを見て呟く。

 「大丈夫……本体は無事」
 《Recovery》

 フェイトがバルディッシュに魔力を込め、自動修復機能の速度を速める。

 「ユーノ……この結界内から、全員同時に外へ転送……いける?」
 「うん……アルフと協力できれば……なんとか」
 「私が前に出るから……その間に、やってみてくれる?」
 「わかった」
 『アルフもいい?』
 『ちょっときついけど……なんとかするよ!』
 「それじゃ……頑張ろう!」
 「うん!」

 フェイトとユーノがビルから飛び立ち、その二つの魔力光をなのはが心配そうに見つめる。

 「あっ……」

 なのはがユーノの作った結界に守られているのを確認して微笑み、すぐに厳しい表情に戻して戦いに挑むフェイト。


 「くっ……!」

 バルディッシュとレヴァンティンが競り合い、バルディッシュの刃が少し毀れる。

 《Photon Lancer》

 少し距離をとったフェイトの周囲に四つのフォトンスフィアが生成される。

 「レヴァンティン、私の甲冑を」
 《Panzergeist!》

 シグナムがそれを見て全身に魔力で構成された鎧を纏う。

 「撃ち抜け! ファイア!!」

 フェイトが四つのフォトンスフィアをシグナム向けて撃ち出す。
 しかし、それを見てもシグナムは全く動かず、あまつさえ目を瞑り、自身に纏う鎧でフェイトの放った魔力弾を全て弾き飛ばしてしまった。

 「っ……!」

 それを見て驚愕するフェイト。

 「魔導師にしては悪く無い線だ。 だが、ベルカの騎士に一対一を挑むには……まだ足りん!!」

 シグナムが一瞬でフェイトの目の前まで移動し、バルディッシュのバリアを破って襲い掛かる。

 「はああ!」

 レヴァンティンが弾丸を装填する。

 「レヴァンティン、叩き斬れ!」
 《Jawohl!》

 レヴァンティンの刀身に炎が纏い、フェイトがバルディッシュで受け止めるが本体にダメージを受けてしまう。
 そのまま衝撃でフェイトが吹き飛ばされ、ビルに突っ込む寸前で八角星で無色透明の魔法陣が浮かび上がり、
 そこからが飛び出してフェイトを受け止める。 が、勢いを殺せずにビルに激突する。

 「くっ…………?」

 フェイトが突如現れたに驚く。

 「ごめん、遅くなって」
 「……仲間か」
 「……ああ」

 シグナムがを見据えて言い、が感情を押し殺した声で答える。

 「!」

 ユーノがフェイトを助けようと駆けつけて来た。

 「また管理局の奴か、めんどくせぇ奴らだな」

 それを追ってきたヴィータがを見て吐き捨てる様に言う。

 「……ユーノ、フェイトを頼んだよ。 僕があの二人を引き受ける」

 がシグナムとヴィータを睨みつけながら言う。

 「私達二人をお前一人で相手にする気か? 相手の力量も図れないようでは話にならんな」
 「そんな口を叩けるのも今の内だ」
 「……なめてんじゃねぇ!」

 シグナムとヴィータが戦闘態勢をとる。

 『三人とも、僕が時間を稼げるのは精々二分……その間に、なんとか結界を破って欲しいんだ』
 『そうしたいんだけど……この結界、滅茶苦茶堅いんだよ!』

 が三人に念話を送り、アルフが敵の攻撃を凌ぎながら答える。

 『っ……とにかくユーノはフェイトの治療を』
 『わかった!』
 『……』
 『大丈夫、なんとかなるよ』

 が基本形態になったを手に取る。

 「いくよ! ! !」
 《ええ!》
 《ああ!》

 の返事を聞き、は上空にいる二人の強敵に戦いを挑んで行った。




 あとがきらしきもの

 優「なんか物凄く中途半端に終わりました二話前編です」
 ユ「中途半端過ぎて意味わかんないね」
 ア「てゆうかほとんど原作と一緒じゃないか」
 フェ「違うのは最後だけだね」
 「しっかりしてよねほんと」
 優「ぐっ……立て続けに言われるとキツイ……。
   でも中々書くのが難しくて……頑張ります!」


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