時空管理局本局内艦船ドック内休憩所 12月3日 時刻12:34 「闇の書……かぁ」 が先程まで目を通していた事件資料を机の上に置く。 《この資料を見る限りでは、かなり厄介なモノのようだな》 「ああ、管理局も何度か確保しようとしたんだが……その度に多くの犠牲が出ている」 「……クロノ」 が心配そうにクロノを見る。 随分前になるが、リンディとクロノが自分達の事を話してくれた時、クロノの父……クライドが任務中に亡くなった事を聞いていた。 その任務の内容が闇の書の護送だったというのは知っていたのだが……、クロノの父の仇を、息子であるクロノが任務で背負うとはなんとも皮肉な話だった。 「別に心配しなくてもいい、気にするな」 「でも……」 「が記憶の事をあまり気にしないようにしてるのと同じだよ」 「それは……まぁそうかも……」 《、クロノを信用してないの?》 「そんな事ないけど……」 「……ったく、そんなんだから任務中も詰めが甘いんだよ」 「なっ! 心配してやってるんだぞ!」 「だから、心配しなくてもいいって言っただろ? この話はもう終わりだ。 今一番重要なことは、闇の書を何とかする為の対策を考える事だからね」 が大真面目に怒るのを、クロノは苦笑しながらさらりと答える。 「……はぁ……わかったよ。 確かに、闇の書みたいな物騒なのをほったらかしにする訳にもいかないしね」 「そういう事だ」 クロノは至って普通に喋っているが、には多少なりとも無理をしているように見えて仕方なかった。 自分には家族の記憶はないが、以前リンディが父親というものは息子にとっては大きな壁であり目標でもあると聞かされた事がある。 僕もそうだったのかな……、と考えたがそれも仕方のない事で……とりあえず、もう気にしない事にした。 「ま、クロノももうすぐお兄ちゃん、になるんだからしっかりしないとね〜?」 「なっ!? 何言ってるんだ!」 がジト目で意地悪くクロノをからかうと、クロノは予想通りの反応を示していた。 《そういえば、フェイトとリンディは養子縁組の話をしていたんだったな》 《もう話はついたの?》 「いや、まだフェイトの返事を待ってるところ……ってそうじゃない! 、お前〜!」 「あははは、怒るなってクロノ、冗談冗談」 が顔を真っ赤にして怒るクロノと少し距離を取ってなだめる。 「……ったく。 あ、艦長」 クロノが怒りを抑えた時、扉が開いてリンディとフェイトが姿を見せた。 「フェイトも一緒だったんだ」 「うん」 「どうしたのクロノ、ちょっと顔が赤いわよ?」 「な、なんでもありません」 「あ〜、それはクロノが」 「!!」 「わ、悪かったって」 が喋ろうとするのを大声で遮るクロノ。 その光景をリンディとフェイトが頭に?マークを浮かべながら見ていたが、リンディは少ししてクスクス笑っていた。 何があったか、大方の予想がついたのだろう。 「なんだかよくわからないけど……まぁいいわ。 それより二人とも、今回の事件資料、もう見た?」 「はい、さっき全部」 「とりあえず、一通りは」 壁のすぐ向こう側で、達の母艦であるアースラや他の艦船を整備員達と無人機が忙しそうに整備している。 「なのはの世界が中心なんですよね、魔導師襲撃事件って……」 「そうね、なのはさんの世界から、個人転送で行ける範囲に、ほぼ限定されてる」 「あの辺りは、本局からだとかなり遠いですね……」 「そうだね……中継ポートでも使わないと転送できないし」 四人が今回の事件について話し合う。 「アースラが使えないの、痛いですね……」 「空いている艦船があればいいんですが……」 「僕はアースラ以外はどうもやりにくいんだけどな〜」 《……今はそんな事言ってる場合じゃないだろ》 《ま、アースラの設備と環境に慣れちゃってるからでしょうけどね》 アースラは丁度今が整備期間に当たっており、その為に少しの間使用できないのだった。 いくら高性能な次元を行き来する艦船でも、ちゃんと整備をしなければ動かなくなってしまうのはなのはの世界の車とさして変わらない。 「長期稼働できる艦は、二ヵ月先まで空きがないって」 「そうか……。 というかフェイト、君は良いのか?」 「何が?」 いきなりクロノに問い掛けられ、驚くフェイト。 「嘱託とはいえ、あくまで君は、外部協力者だ。 今回の件にまで、無理に付き合わなくても……」 「クロノや、リンディ提督が大変なのに、呑気に遊んでなんかいられないよ。 アルフも付き合ってくれるって言ってるし、手伝わせて!」 「ん……ありがたくはあるんだが……」 「嘱託なのは僕もそうだけど、やっぱりちょっとね……」 「私なら大丈夫だから、お願い」 「……まあ、決めるのはフェイトだけどね」 その場に沈黙が流れる。 「やっぱり、あれでいきましょうか!」 それを振り払うように、リンディが身を乗り出して手をポンッと叩き、とっておきのアイデアを実行する事にした。 「「 あれ? 」」 とフェイトが一緒に尋ねるが、リンディは笑っただけだった。 本局内のとある休憩室の一角で、リンディがアースラスタッフとその関係者達を集めていた。 彼らの前に立ち、リンディが凛とした声で話す。 「さて、私たちアースラスタッフは今回、ロストロギア、闇の書の捜索。 及び、魔導師襲撃事件の調査を担当する事になりました。 ただ、肝心のアースラがしばらく使えない都合上、事件発生地の近隣に、臨時作戦本部を置く事になります。 分割は、観測スタッフのアレックスとランディ」 「「 はい! 」」 「ギャレットをリーダーとした、捜査スタッフ一同」 「「「「「「 はい! 」」」」」」 「司令部は、私とクロノ執務官、エイミィ執務官補佐、嘱託魔導師、フェイトさん、アルフさん、以上三組に分かれて駐屯します。 ちなみに司令部は、なのはさんの保護をかねて……なのはさんのお家の、すぐ近所になりま〜す」 先程までの凛とした声色から打って変っていつものどこか抜けた声で楽しそうに言うリンディ。 これだけ上手くコロコロと変えれるのも、ある意味凄いかもしれない。 「えっ? うわ〜っ!」 なのはが嬉しそうに声をあげ、その場の全員に笑みが零れた。 海鳴市市街地 同日 時刻14:21 「うわっ! うわ〜すごーい! 凄い近所だー!」 なのはは興奮冷めやらぬ様子で、先程からはしゃぎ続けている。 いくらAAAクラスの魔導師といっても、まだ9歳の女の子なのだ、嬉しくてしょうがないのであろう。 「ほんと!」 フェイトもなのは程ではないが、しかし本当に嬉しそうにしている。 「うん! ほら! あそこが私ん家!」 なのはがフェイトに自分の家がある場所を指差して教える。 それを、リンディが微笑ましく見守っていた。 「あの、君? いくらなんでもそんなには持てないだ……ろ……ぅ……」 「へ? 全然大丈夫ですよ?」 宅配の仕事を今まで30年続けてきたが、こんな少年が今までいただろうか? 自分より遙かに小柄な、しかもまだ年端もいかない少年が、両手合わせて十個もの段ボール箱を軽々と持ち上げていた。 夢かとも思ったが、頬をつねっても痛いままで……。 「あの、残りは僕が全部持って行くのでここに置いておいて下さい」 「いや、しかしだな……」 「ここまで運んで貰ってるんだし、ほんとにありがとうございました」 「あ、あぁ……じゃあ、頼むよ坊や……」 「御苦労様でした〜」 が車を運転して去っていく宅配屋に満面の笑顔で手を振る。 優しさというのは時に残酷なものでもある。 ベテランの自信とプライドをズタズタにした事にはもちろん気が付いていないは、 日用品等が入った段ボール箱を次々と器用に持ち上げては部屋に運び込んで行く。 なんとも便利な引越し屋さんである。 『……この世界だと、これは非常識な事じゃないのか?』 『……いいんじゃないかしら?』 とが念話でどうしたものかと相談するが、が楽しそうにしているので何も言えずにいた。 リンディにエイミィ、それにクロノやなのは達も引っ越しで忙しいので、がとんでもない事をやらかしているのに気付いていなかった。 エイミィが本局から運び込んでいた機器をチェックしていると、二匹の動物が目に入った。 「ユーノ君とアルフは、こっちではこの姿か」 「新形態! 子犬フォーム!」 アルフが元気良く飛び跳ねてポーズをとる。 「なのはやフェイトの友達の前では、こっちの姿でないと……」 ユーノが頭を掻きながら答える。 まぁ、不可抗力とはいえ温泉ではなのは・アリサ・すずかと一緒に入ってしまっているのだ。 もし本当の事がばれたりしたら、すずかは苦笑いで済みそうだが、アリサはもう頭に角を生やして怒るだろう。 「君らも色々と大変だねぇ〜……」 「わあ〜、アルフちっちゃい! どうしたの?」 「ユーノ君もフェレットモード久し振り〜!」 フェイトがアルフを、なのはがユーノを抱きかかえて楽しそうにじゃれ合う。 「さて……と、これで最後……いよっと! ん?」 が最後の10個を持ち上げると、こちらに向かって歩いてくる二人の人影を見つける。 別に人が歩いていたところで驚く事では無いのだが、その人影には見覚えがあった。 「ああああああ!!」 「えっと……君?」 アリサがを指差しながら大絶叫して驚き、すずかは至ってマイペースに尋ねる。 「アリサにすずか……? どうしてここに……」 「それはこっちのセリフよ! なんであんたがフェイトの引越し先のとこで引越しの手伝いして……ってあんた一体何個持ち上げてるのよ……」 「ほんと……重くないの?」 「うん、全然平気だけど、それがどうかしたの?」 「君って力持ちなんだね〜」 「いや……これはもうそんなレベルじゃないでしょ……」 とすずかのあまりのマイペースさに呆れつつ、アリサはこいつほんとに何者なんだろ……と、9歳とは思えない思考を巡らせていた。 「ま、とにかく部屋まで案内するよ。 なのはとフェイトも喜ぶだろうし」 「うん」 「あ! ちょっと待ちなさいよ!」 考え込んでいたアリサは、あれだけ持ち上げても表情一つ変える事なくスタスタ歩いて行くの後を追いかけた。 「お〜い、クロノー!」 「どうしたんだ。 忙しいんだからこれ以上仕事を増やす……な……って?!」 局から持ち込んでいた機器のチェックをしていたクロノが目の前に飛び込んできた光景に驚く。 そこにはが段ボール箱を十個も持ち上げており、それを物凄く怪しそうに見つめる少女と全く気にしていない少女がいた。 「あのさ、この二人はなのはとフェイトの友達だから呼んで来てっておおおお!?」 「ちょっとこっちに来い!」 「ちょ!? あぶな!! クロノ引っ張るな! 落ちる! 落としちゃうって!!」 「いいから来い!!」 クロノがを思いっきり部屋の奥に引っ張って行き、アリサとすずかは取り残されてしまった。 「……なんなのよ、もう……」 「賑やかで良いと思うよ?」 「あんた……良い性格してるわねほんと……」 「?」 すずかは首を傾げてアリサを見つめ、そんな親友を見てアリサは溜息をついていた。 「大体お前はいつも警戒心がなさすぎるんだよ!」 「なんだよ! 別に悪い事してないだろ!?」 「あれだけ目立つなって言っておいたのに目立ちまくってるじゃないか!」 「あんなの普通じゃないか! せっかく運んでやったのに!」 「お前を基準に考えるな! 箱を十個も持ち上げる子どもがどこにいるんだよ!?」 「ここにいるだろ!」 「そういう事言ってるんじゃないだろ!?」 「あぁもぉうるさああああああい!!」 「「 …… 」」 先程まで言い合っていたと男の子の声を聞いていたが(というより耳に入ってきてしまっていたのだが)、 女性の大絶叫で静まり返った室内をアリサは呆れた感じで見つめ、すずかは茫然と突っ立っていた。 「あの……ごめんねアリサ、すずか……。 せっかく来てくれたのに……」 フェイトが申し訳なさそうに謝る。 「別にフェイトが謝る事ないじゃないの」 「そうだよ、せっかく会えたんだから」 「うん……」 「で、とあの男の子はどうなってる訳?」 「にゃはは……今はお説教中……かな?」 なのはが苦笑いをしながら答える。 先程の大絶叫は機器の細かい設定をしていたエイミィだった。 今はリンディとエイミィがクロノとにこっぴどく説教をしている最中である。 「ふ〜ん……まぁ、とりあえず初めまして! ってのもなんか変かな?」 「ビデオメールでは、何度も会ってるもんね」 「うん。 でも、会えて嬉しいよ、アリサ、すずか」 「うん!」 「私も!」 「ごめんなさいね、二人とも。 うちの子達が騒いじゃって……」 そうしていると、説教を終えたらしいリンディがアリサとすずかに謝る。 「いえ! 大丈夫です!」 「気にしてないので」 「ありがとう、アリサさん、すずかさん」 「はい……」 「私達の事……」 アリサとすずかが初対面なのに自分達の名前を知っている事に驚く。 「ビデオメール見せて貰ったの」 「そうですかぁ!」 それを感じ取ったのか、リンディが理由を説明し、アリサとすずかが笑みを零す。 「良かったら、皆でお茶でもしてらっしゃい」 「あ! それじゃあ家のお店で」 「そうね。 じゃせっかくだから、私もなのはさんのご両親にご挨拶を……ちょっと待っててね」 リンディが部屋の奥へと入って行く。 「綺麗な人だね〜」 「フェイトのお母さん?」 「えと……その……、今は……まだ……違う……」 アリサに尋ねられ、曖昧な返事しかできない事に恥じらいつつも、なんだか嬉しくなったフェイトは俯きながら答えた。 海鳴市市街地"喫茶翠屋" 同日 時刻15:37 海鳴市内の有名な喫茶店でもある翠屋は、休日の快晴である事も手伝ってか非常に繁盛していた。 その翠屋の屋外に置いてあるテーブルを囲んでいるなのは達。 「ユーノ君久し振り〜」 「キュ、キュ〜」 「う〜ん……なんかあんたの事、どっかで見た気がするんだけど……気のせいかなぁ?」 「クゥ〜ン……」 『二人とも大変だね……』 『う、うん……』 『まあね〜』 が翠屋特製のお菓子を次から次へと口に放り込みつつ、ユーノとアルフに念話で話しかける。 それを微笑ましく見守るなのはとフェイト。 「ていうか……」 「ん? どしたのアリサ?」 「あんたいくらなんでも食べ過ぎ! あんたが頼んだお菓子のせいでテーブルが覆い尽くされちゃってるじゃないの!!」 「いや、だってここのお菓子おいし過ぎるんだよ、うん」 そう言ってまた口にお菓子を放り込む。 「……ったく、こんなに食べてるのになんで太らないのか不思議だわ……」 「そういえばそうだね。 君、どっちかっていうと痩せてる方だし」 「なんか腹立つわね……」 「いや、そんな事言われても……」 先程から、アリサとすずかはと楽しそうにお喋りをしている。 それは別になんでもないはずなのに……、なんだか……ちょっと嫌だな……。 そこまで考えて、フェイトははっと思い直す。 何て事を考えてるんだ、三人は唯普通に喋ってるだけなのに……。 フェイトは心の中に僅かに生まれてくる未知の感情を振り払おうとしたが、それは中々消えてくれなかった。 「フェイトちゃん? どうしたの?」 「え?」 「なんだかぼーっとしてるよ?」 なのはが少し心配そうに見つめる。 「あ……ううん、なんでもないよ」 「そう……? あ」 フェイトの様子が少し気になるなのはだったが、向こうの方から見覚えのある人影が歩いてくるのに気づいた。 「そんな訳で、これからしばらくご近所になります。 よろしくお願いします」 「ああ! いえいえ、こちらこそ」 「どうぞ、御ひいきに」 リンディが以前と同じように気遣い(自称)の嘘で士郎と桃子に説明した後、頭を下げて挨拶を終える。 それを見た桃子と士郎もまた、頭を下げて新しいご近所さんに挨拶を返した。 「フェイトちゃんと君、三年生ですよね? 学校はどちらに?」 「はい、実は……」 リンディが説明しようとしたところで、フェイトとが小包を持って店内に入ってきた。 「リンディていと……リンディさん」 「はい、なぁに?」 「あの……これ……これって……」 「なのはの学校の制服……だよね?」 フェイトとが少し戸惑いながらリンディに尋ねる。 「転校手続き取っといたから。 週明けから、なのはさんのクラスメイトね」 リンディが微笑みながら二人に伝える。 「あら、素敵〜!」 「聖祥小学校ですかー、あそこは良い学校ですよ、な? なのは」 「うん!」 「良かったわね〜、フェイトちゃん、君!」 「あの……えと……はい……、ありがとう……ございます」 「あ、ありがとう……です」 フェイトが制服の入った箱を抱き締め、は頭を掻きながら苦笑気味に答えた。 『い、良いのかな?』 『良いんじゃないのか?』 『そうよ、遠慮する事なんてないわ』 『うん……そうだね』 念話でとに尋ねてみるが、二人とも快く承諾してくれた。 学校かぁ〜……とボソッと呟きながら、は少しの間自分が着る制服を見つめ続けていた。 海鳴市市街地ハラオウン宅 同日 時刻17:31 陽が落ちていき、夕焼け色に染まった空。 高級マンションを思わせるマンションの白と茶色のコンクリートも、夕焼け色に染まって美しく見える。 「ロストロギア……闇の書の最大の特徴は、そのエネルギー源にある。 闇の書は、魔導師の魔力と魔法資質を奪う為に、リンカーコアを喰うんだ」 そのマンションのとある一室、リンディが臨時作戦本部とした部屋の一角で、 クロノがエイミィに闇の書の特徴を、モニターでその姿を見ながら伝えていく。 「なのはちゃんのリンカーコアも、その被害に?」 「あぁ……間違いない。 闇の書は、リンカーコアを喰うと、蒐集した魔力や資質に応じてページが増えていく。 そして、最終ページまですべて埋める事で……闇の書は完成する」 「……完成すると……どうなるの?」 「少なくとも……碌な事にはならない……」 「……」 海鳴市市街地 同日 時刻22:30 ネオンが光り輝くオフィス街のとあるマンションの屋上で、都会にありがちな喧騒を見下ろす二人の人影と一匹の狼。 「来たか」 屋上へと続く階段のある部屋の扉が開いた音が聞こえ、振り向きもせずに一人の女性が声を発した。 「うん」 現われたのは、どう見てもまだ10歳にも満たない幼い少女。 「管理局の動きも本格化してくるだろうから、今までの様にはいかないわね……」 「少し遠出をする事になるな。 なるべく離れた世界での蒐集を」 「今、何ページまできてるっけ?」 そう聞かれ、一冊の古びた分厚い本を持っている女性がそれのページを捲っていく。 「340ページ。 この間の白い服の子で、かなり稼いだわ」 「おっし! 半分は超えたんだな。 ズバッと集めてさっさと完成させよう! 早く完成させて、ずっと静かに暮すんだ……はやてと一緒に……」 「「 …… 」」 「行くか? もうあまり時間もない」 それまで黙っていた狼が促す。 「あぁ……行くぞ! レヴァンティン!」 《Sieg》(勝利を) 「導いてね、クラールヴィント!」 《Anfang》(起動) 「やるよ、グラーフアイゼン!」 《Bewegung》(作動) 三人がそれぞれ騎士甲冑を身に纏い、起動させたデバイスを手にする。 「それじゃ、夜明け時までに、またここで」 「ヴィータ、あまり熱くなるなよ」 「わぁーってるよ!」 「……」 そして、彼女らは光の帯を引きながら飛び立って行った。 海鳴市市街地ハラオウン宅 同日 同時刻 「ん?」 部屋の整理をしていたエイミィがモニターに知らせが届いたのに気付いてスイッチを押し、空間モニターを起動させる。 「はいは〜い? エイミィですけど〜」 『あ、エイミィ先輩。 本局メンテナンススタッフのマリーです』 「あぁ、何? どうしたの?」 『先輩から預かってる、インテリジェントデバイス二機なんですけど……なんだか変なんです』 「え?」 『部品交換と修理は終わったんですけど……エラーコードが消えなくて……』 「エラー? 何系の?」 『えぇ……必要な部品が足りないって……。 今、データの一覧を』 そう言ってマリーがデータをエイミィの方へ送る。 「あ、きたきた」 エイミィの前にモニターが映し出され、そこにデータが表示されていく。 「え? 足りない部品って……これ?」 『えぇ……これ、何かの間違いですよね?』 《エラーコード E203 必要な部品が不足しています》 《エラー解決の為の部品、"CVK-792"を含むシステムを組み込んでください》 『二機共、このメッセージのまま、コマンドを全然受け付けないんです。 それで、困っちゃって……』 (レイジングハート……バルディッシュ……本気なの? "CVK-792"……ベルカ式……カートリッジシステム……) 《《 Please 》》(( お願いします )) あとがきらしきもの 優「さぁさぁ三話後編終了しましたが、いかがでしたか?」 ク「どうもこうもないだろ」 優「相変わらずあっさりと……」 「学校ってどんなのかな〜?」 フ「さ、さぁ……」 優「なんか学園モノが入ってきますが、それもお楽しみに!」 ク「……僕には関係ないな」 ユ「……奇遇だね、僕もだよ」 な「にゃはは……」 5/17に若干内容を修正しました。 BACK NEXT 『深淵の種 U』へ戻る |