アースラ艦内魔法修練場コントロールルーム 時刻15:12 魔法修練場。その名の通り、魔導師達が魔法等の鍛錬の為に使用する場所。 コントロールルームと多目的空間に分かれており、コントロールルームでは、多目的空間内の魔力障壁出力の設定や気温等の調整。 使用者のデータの収集や傀儡兵の使用の有無及び強さの設定、万一の時に対応すべく備えられた非常停止機能等、 文字通りコントロールするための部屋で、二人〜三人いれば事足りるようになっている。 多目的空間は、中で魔導師達が魔法等の鍛錬をする為の空間である。 つい最近までは管理局内のそれぞれの部署に大小いくつかの修練場があるだけだったが、 いついかなる時でも鍛錬を怠るべきではないという管理局全体の意思を反映させる為、 また、深刻な人手不足を少しでも解消する為に、L型の次元航行艦船にも設置する事が決定していた。 その先駆けとして、まずアースラがベースとなって設置される事となっていた。 「なんだか線やらなんやらでゴチャゴチャしてるね……」 「まだ試験運用の段階だからね〜」 の第一印象はあながち間違いではないだろう。 魔法修練場のコントロールルームは、それはもう色んな回線でごった返していた。 歩くのも一苦労な程である。 「これで模擬戦闘なんてやっても大丈夫なの?」 少し不安になったは、クロノとエイミィの方を向いて尋ねる。 「まあ、見た目はまだあれだけど十分使用に耐えれるようになってるし、大丈夫だよ」 「僕らが初めての使用者だけどな」 「うっ……なんか妙に不安になってきた……」 「大丈夫、私達がちゃんと制御しますから」 が声のした方に振り向くと、2人の男性がこちらを見て微笑んでいた。 声をかけた人物はオレンジがかった髪で眼鏡をかけており、もう1人は青のショートヘアだった。 「あ、えっと……」 「アレックス、ランディ、調子はどう?」 「異常無しです、艦長。すぐにでもいけますよ」 いつの間に部屋に入っていたのか、リンディがすぐ後ろに立っていた。 「うわっ! び、びっくりしたぁ」 《、そんなにびっくりするなんて失礼よ》 が注意する。 「いえいえ、驚かせちゃったのは私なんですから」 リンディはクスクス笑う。 「すいません、艦長。 少し遅くなりました」 「ま、検査をしていたのなら仕方ないわ」 「検査ってあんなに時間がかかるものなんですね〜……」 がぼそっと感想を言う。 模擬戦闘に協力すると申し出た達ではあったが、ロストロギアの中でどれだけ眠っていたかわからないのもあってか、 とりあえず色々検査をして、魔法を使っても大丈夫と判断されるまでは控えた方がいいというクロノの提案を聞き入れていた。 はリンカーコアの状態や身体の検査、デバイス二人(二機)はメンテナンスルームでの精密検査を行った。 詳しい結果はまだわからないが、魔法を使うにあたっては特に問題はないとの簡易報告を受け、ついさっきアースラに着いたばかりだった。 検査をしている間に一時間以上経過してしまっていたが。 「さて、随分遅れたし、そろそろ行こうか」 クロノはを見ながら言う。 「よーし、頑張るか!」 「いや、別にそこまで意気込まなくても良いんだが……」 「君、倒せそうだったら倒しちゃっていいんだよ」 エイミィがこっそりに伝える。 「あはは、わかりました!」 「おいエイミィ……」 「どうしたのかな〜? クロノ君?」 まるで何事も無かったかのように答えるエイミィ。 「……まあいい」 「二人とも、絶対に無茶しちゃだめよ。 特に君、あなたは正規の訓練も受けていないんだから、辛くなったらすぐに中止を申し出る事、いいわね?」 「わかりました、リンディさん」 「では、多目的空間内へ転送するので、トランスポーターへ」 アレックスが移動を促す。 「えっと、僕はどうすれば?」 「ただ上に乗っていれば転送するよ」 の質問にランディが答える。 「こっちだ、」 クロノがを呼び寄せる。 二人がトランスポーターの上に乗ったのを確認して、エイミィ・アレックス・ランディの三人が準備を始める。 三人とも物凄い速さで各機器へと指示を与えていく。 「転送システムオールグリーン。対象者二名、多目的空間内へ転送します」 次の瞬間、眩い光がクロノとを包み込み、ふわっとした妙な感覚を覚えたと思ったら、先程とは違う場所に立っていた。 辺り一面が青白い金属でできているようで、天井はドーム状の形をしている。 呆然としていると、が声をかけてきた。 《、ボーっとしてないで換装したらどうだ?》 「え……うん、そうだったね」 なぜか覚えている換装の仕方。 考えなくても自然とできた事に少し戸惑いつつも、随分と懐かしい感じがする。 なぜ懐かしいのかはわからなかったが、とりあえず今は集中しようと考える。 いくら模擬戦闘といっても、力をもって相手を倒そうとすることに違いはない。 《私達も基本形態になりましょう》 《ああ》 そう言って、二人は待機状態のイヤリングからそれぞれの基本形態に姿を変える。 右手には、両刃の刀身の片方にかぎ爪がついており、柄の部分に本体を埋め込んでいるマーシナリーズタイプのが。 左手には、刀身の中央に本体を埋め込んでいるパルチザンタイプのが、それぞれ収まっている。 これにも妙に懐かしい感触を覚えるに念話が繋がる。 『クロノ君、君、準備は良い?』 声の主はエイミィだった。 『ああ、いつでもいける』 クロノが先に答える。 『こっちも大丈夫です』 少し遅れても答えた。 心臓が早鐘を打つのがわかる。 アースラに向かう途中に、クロノは相当強いのだとエイミィから教えられたのを思い出した。 なんでも、クロノは管理局で5%程度しかいないAAAランクを更に上回るAAA+ランクらしい。 聞いた時はあまり実感が沸かなかったし、AAAランクとか言われても何の事だかさっぱりだったが、 今、少し離れた所にいるクロノからは刺すような威圧感がある。 戦い方は頭に残っているが、本当に戦えるのか……? 体の奥から次々と沸き起こってくる緊張と不安に襲われるが、 とが声をかけてくれた。 《そんなに緊張しなくても大丈夫よ、あなたは私達が守ってあげる》 《一人で戦おうとするんじゃない、わかったな?》 「……そうだね、ありがとう」 二人を持つ手がとても温かい。 不思議だが、それだけで緊張と不安が無くなっていた。 二人を持つ手に少し力を入れ、目を閉じて集中する。 「両者、準備オーケーです!」 「わかりました。それでは模擬戦闘開始の準備を」 「コントロール、各センサー及びシステムへリンク」 「魔力障壁発動。出力、AAA+ランク対応クラスへ」 「空間内気温16.4℃」 「緊急停止システムオールグリーン、スタンバイモードのまま継続します」 「出力、対応クラスまで上昇、これを維持します」 「全システムオールグリーン、準備完了しました!」 「……模擬戦闘、開始!」 多目的空間内に無数のディスプレイが表示され、カウントが開始される。 X……W……V……U……T…… カウント0と同時に、とクロノは空間内へ飛翔した。 あとがきらしきもの 優「これにて第三話後編しゅ〜りょ〜で〜す」 ク「おい」 優「ん? なんでしょうかクロノ君」 ク「今回に戦闘シーンを入れるんじゃなかったのか?」 優「あー……」 ク「……」 優「……」 ク「……」 優「では次回もお楽しみにっ! それじゃっ!」 ク「逃げるなあああああ」 BACK NEXT 『深淵の種 T』へ戻る |