アースラ艦内魔法修練場コントロールルーム 時刻15:40 コントロールルームのスクリーンが真っ赤に染まり、警戒音が鳴り響く。 「魔力爆発……!? まずいです、魔力障壁が……!」 ランディが慌てて状況を伝える。 「いけないわ! 魔力障壁の出力をできるだけ上げて! ……クロノと君は!?」 リンディが即座に対応させる。 「魔力反応が強過ぎて特定不能です!」 エイミィが悲鳴に近い声を上げる。 「魔力障壁出力Sランク対応クラスまで上昇! なんとか耐え切れそうです」 アレックスも状況を伝えていく。 「魔力爆発が治まっていきます」 鳴り響いていた警戒音が消え、スクリーンの映像が回復し二人の姿が映し出される。 二人とも、自分の周囲にバリアを張ってなんとか耐え凌いでいた。 コントロールルームにいた四人が安堵の息を吐く。 しかし、飛翔していたクロノはかなり疲れた様子で床に降りて膝をつき、 はその場に倒れてしまった。 「! 急いで二人を戻して!」 「わかってます!」 「管理局の医療施設にも手配を!」 「はい!」 時空管理局本局内医務室 時刻17:12 「ん……」 《目が覚めたか》 《大丈夫? 》 「…………ここは……?」 《お前が最初に目を覚ました所だ》 《あなたは魔力を使い過ぎて倒れてしまったのよ、覚えてる?》 「そっか……僕はクロノと模擬戦をして……」 最後の一撃を放った直後、凄まじい爆発と閃光に飲み込まれ咄嗟に周囲にシールドを張ってなんとか耐えたが、 既に魔力が尽きかけていたのでそのまま気を失っていたのだった。 「クロノは無事なの?」 《ああ、あの少年なら大丈夫だ》 《よりずっと元気よ》 「そっか、良かった〜」 が安心した時、医務室のドアが開いた。 「良いことなんて無いわよ? 君」 入ってきたのはリンディ・クロノ・エイミィの三人だった。 心なしか……というか確実にリンディは怒っており、なぜかクロノは顔面蒼白といった感じで、エイミィは苦笑いをしている。 「リ、リンディさん?」 「私は絶対に無茶をしてはいけないと言った筈よ」 「あ、えっと……つい熱くなっちゃって……」 「つい、じゃ済まされないわ。もう少しで大変な事になっていたかもしれないのよ」 「あ、あの……」 「今後、あんな無茶は絶対にしない事……わかったわね?」 「は、はい……」 はリンディの威容な威圧感に圧倒されてしまった。 (リンディさんってこんなに怖かったんだ……) は内心そう呟いて冷や汗をかいていた。 クロノの様子を見ると、彼も相当怒られたようだ。 「それと、さんにさん。 あなた達も君が無茶をしそうになったら止めてあげて下さい。 今回はなんともありませんでしたが、次はどうなるか……よろしいですね?」 《そ、そうだな……》 《気をつけるわ》 も圧倒されてしまっている様である。 しかし、はどこか嬉しそうに答えた。 「それでは、私は今回の件を上層部に説明してきますから」 「は、はい……行ってらっしゃい……」 そう言って、リンディは医務室を後にする。 リンディの足音が完全に聞こえなくなった時、を除く全員が大きく息を吐いた。 「こ、怖かった……」 《……だな》 「艦長はいつもは優しいけど、怒る時はほんとに怖いんだよね……」 エイミィがに教える。 「クロノも怒られたの?」 部屋に入った時から(正確にはもっと前からであろう)、ずっと沈んでいるクロノに尋ねてみる。 「……あぁ」 「そ、そう……(僕よりかなり怒られたんだな……)」 は心の中でそう思った。 《でも、あんなに怒るという事はあなた達を心配している証拠よ》 一人だけ、なぜか嬉しそうにしていた(様な気がする)が言った。 「そうだねー……クロノ君は勿論だけど、君の事もすっごく心配だったんだろうな、艦長」 やはり同じ女性だからか(はデバイスだが)、エイミィが答える。 「……そう、なのかな?」 が尋ねる。 「母さんはが自分の息子みたいだって、この前言ってたからな」 クロノは少し前にリンディが自分に話した事を思い起こしながら答えた。 の言葉を聞いて安心した様で、いつもの彼に戻っていた。 「そうなんだ……」 は複雑な気分になっていた。 どこから来たのかもわからない自分を、そこまで想って貰えるのは嬉しいのが……余計な心配をかけてしまっている様に思えた。 《どうしたんだ?》 「……え?」 《ぼーっとしてるぞ》 「あ……なんでもないよ、うん」 《……ならいいけどな》 どうやら考え込んでしまっていたようだ。 これこそ周りに余計な心配をさせてしまうので、深く考えない事にした。 「けど、って結構心配性だよねー」 エイミィがニヤニヤしながら言う。 《ああ見えて過保護なんだから》 も楽しそうにからかう。 《なっ! だ、誰が!》 《誰がってあなたの事よ、》 《ぐっ……そういう事を言ってるんじゃ……》 「もう、誰かさんと似て素直じゃないなぁ」 エイミィはクロノを横目で見ながら意地悪く言う。 「……なんなんだエイミィ」 「べっつに〜」 四人のやりとりを見て、はいつも間にか笑っていた。 そして、つまらない事でいちいち悩まないようにと自分に言い聞かせた。 ちなみにクロノが止めに入るまで、は女性二人にからかわれ続けていた。 あとがきらしきもの 優「てな訳で第四話後編終了です!」 ク「どんな訳だ」 優「そんな事はきにしなーい」 ク「……なんなんだ一体」 優「まぁとにかく無事で良かったねクロノ君」 ク「ほんとにな」 エ「だから大丈夫だって言ったじゃない」 ク「いや、エイミィは特に何もしてなかったような……」 エ「……なんか言った?」 ク「なんでもありません」 優「な、なんだかエイミィさんが怖いので、次回もお楽しみに!」 BACK NEXT 『深淵の種 T』へ戻る |